大飯原発設置許可取消し判決は妥当なのか?

※そりゃ原告が大喜びだろうが。
 
福井県大飯原発3、4号機の設置変更許可処分取消を求めて起こされた訴訟で大阪地裁は原告の訴えを認める判決を出した。これに対して関電は以下の様にコメントしているが、関電の立場からすれば当然の事であろう。
 
 
原発の是非については読者様諸兄にもそれぞれの考え、と言うものがあるだろう。そしてこの日本は地震の多い場所にある国であり、大地震のリスクを完全に排除する事も、また原発の安全を脅かす様な規模の地震の発生を正確に予想する等と言う事も現状では不可能である。そもそもそういう場所柄の国に原発を設置する、と言う時点でそれなりのリスクを抱え込んでいる事は否定の仕様がない事実である。
 
fだが、「原発の設置の是非について裁判所が何処まで関与出来るのか?」と言う点に関しては既に最高裁で判示されており、簡単に言ってしまえばそれは
 
「設置の是非そのものは専門家の判断に委ねるべきであり、裁判所が判断するのはその専門家の判断が法律に適合しているか否か」
 
だと言う事になる。この判決では関電の基準地震動を検討した際にその基準地震動は地震断層などの観測データに基づく「平均値」と指摘し、平均値と乖離するデータを検討すること自体をしておらず、規制委も必要性を検討することなく設置許可を与えており、
 
「許可するまでの判断過程に看過しがたい過誤、欠落がある」
 
と判示した。原発の設置場所によって想定される地震の規模や津波が襲来するとしてそれがどの位の規模になるのか、と言った問題は設置場所や地形によって異なるので画一的な基準など設定しようがない。従って大飯原発について想定される地震の規模が平均値と乖離した物を考慮していないとしても過去の記録や地形に残された痕跡、と言った客観的データでその必要性がない事を立証出来るとすれば原子力規制委員会の判断が「瑕疵がある」とは言えない可能性もあるのである。
 
一方で自然の力は常に人間の想定を越えてきた事もまた事実である。だから極端な話、大飯原発東日本大震災クラスの地震が襲う可能性を完全に排除する事も出来ないだろう。だが、判決が言及した「平均値からの乖離したデータの考慮」とは何処まで考慮せよと言うのだろうか?東日本大震災マグニチュード9.0とされるが、それ以上のマグニチュード2桁の地震の可能性まで考慮するべき、とでも言うのだろうか?理論上あり得るリスクであってもその可能性まで考慮すればそもそも何も出来ない、と言う事は往々にしてある。例えば雑煮の餅を喉に詰まらせ、命を落とす可能性があるから雑煮に餅を入れるな、と言う事にまではなるまい。だが、この手の裁判を起こす原告が要求しているのはそういうレベルの事であり、それが妥当かどうかと言う点に関しては疑問が残るのも確かであろう。
 
いずれにしても関電が控訴する事は確実で、この判決がそのまま確定する事はない。上級審の判断に委ねられる事になるが、その判決が日本の原発事情に影響を与える事は間違いない。そういう意味で注目すべき事案であると言えるだろう。