今まで日本で確認されていなかった「ニホンイトヨリ」

 
 

※日本で存在が確認されていなかったのに「ニホンイトヨリ」とは…
 
「ニホン」と言う名を冠していながら今まで国内に生息が確認されていなかった「ニホンイトヨリ」。この度その存在が初めて確認されたと言う。でも、素直にこれを喜んで良いのかどうかは微妙なところである。
 

 

 

 
そもそもなんで「日本で存在が確認されていなかったのに『ニホン』の付いた名前の魚になったのか?」と言う疑問が湧くが、1791年の命名時に模式標本が「日本産」と誤認されていた事が理由なのだそうだ。和名の「ニホンイトヨリ」はその学名を和訳したものでしかない。
 
それなら訂正、改名してはどうか?と言う話になりそうだが、「明らかな種としての存在の誤認」などの理由でもない限り一度命名した学名は訂正出来ない、というのが決まりらしい。そう言えば朝鮮半島固有種の植物で日本統治時代前後に日本人学者によって命名された植物には日本人に因んだ名前があるものが存在する。それが気に入らない韓国学界が訂正を求める運動を始めた、なんて話が随分前にあったが、連中の望む結果にならないのはそういう理由である。

※こちらは普通に見かけるイトヨリダイ。
 
こちらは普通に見かけるイトヨリダイだが、確かに見分けは付きにくい。2つの写真を見比べると尾鰭上の伸びたヒレの一部程度しか明確な違いがない。(これが「イトヨリダイ」の名前の由来)釣り上げた人が気付いたのは慧眼であったと言うよりないだろう。…魚にとっては不幸な事ではあるが。
 
イトヨリダイは日本各地で漁獲されており、スーパーなどで見掛ける事もままある。値段はそこそこするが、それに見合った美味な魚である。皮目を活かした料理は見栄えも良い。が、ニホンイトヨリは名前に反して台湾以南の熱帯域に多く生息する魚だそうで、日本で見かけないのも当然であろう。今回の個体は偶々卵が黒潮に乗って日本近海に漂着してそのまま育ったものと推測されているそうだが、本来日本近海には生息しない魚が生息出来てしまう、と言うのはそれだけ地球温暖化の影響もあるのだと言う裏返しにもなってしまう。素直にこれを喜んで良いのかどうかは非常に微妙なところではある。
 
「イトヨリダイ」とは言うが実は鯛とは無縁の魚でこういう「『タイ』と付くが鯛とは無縁の魚」を「あやかり鯛」と言う。キンメダイなんかもそのクチである。因みに「国内の正真正銘の『鯛』」は真鯛、血鯛(花鯛)、黄鯛(レンコ鯛)、黒鯛、ヘダイ、黄鰭の6種類なのだそうだ。魚の名前も奥深い。そして鯛を重宝するのは日本だけなのだそうだ。淡白で繊細な味わいは外国では受けないらしい。日本人が鯛の味わいを理解出来るのはお茶を飲む習慣があるからだと言う話もある。お茶の成分が味覚を鍛える結果になっているのだそうだ。そういう感覚は日本人として大切にしたいものである。また、ニホンイトヨリが大量に水揚げされる様になったら一度食べてみたい、と言う気持ちもあるが、前述した様にそれは地球温暖化の影響、と言う側面もある。素直にそれを喜んで良いのか?難しい問題も抱えているのである。