「一票の格差」問題を考える

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※どうして全選挙区?

国会議員の選挙が終われば恒例行事となっている弁護士グループによる「一票の格差」訴訟。早速今回も行われた。弁護士グループは「違憲判決」を求めて提訴しているが、「違憲かつ選挙無効」と言う判決が出たとして彼等は一体何を得るのであろうか?

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https://news.yahoo.co.jp/articles/4ea678e02ace1bf6030f1726a7a2d8903cf269f3

今回の総選挙、有権者数が最も少なかったのは鳥取1区の230959人。最も多かったのは東京13区の480247人。単純に計算すると2.07倍となり「格差2倍以内」と言う判例に照らせば「理屈上は」憲法違反となる。だからと言って全ての選挙区が2倍以上だった訳でもないのに「全選挙区の選挙無効」と主張するのは少々乱暴なのではないだろうか?

鳥取1区と東京13区の「一票の格差」が2倍を越えるのは有権者数から見れば明らかだが、それはあくまで「投票率が100%だったら」の話であって実際には全ての選挙区有権者全員が投票した訳ではない。2つの選挙区の選挙結果を見ると以下の通り。

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鳥取1区の選挙結果。

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※東京13区の選挙結果。

どちらも投票率は50%台である。有権者の約半数が何らかの事情で投票をしていない。その理由を一々ここでは批判はしないが、何故「権利を行使していない」分まで含めるのか?と言う疑問が出てくるのだ。そこで実際に投票された有効投票数で考察してみる。

鳥取1区の有効投票数の合計は125426票。東京13区の有効投票数の合計は234562票。「実際に投じられた一票」で見れば格差は1.87倍になる。2倍以内だ。そこまで目くじら立てる様な話とまでは言えなくなるのだが?

弁護士グループが主張する様な「一票の平等」を追求すると結局大都市からの選出議員を増加させ、地方からの選出議員を減少させる結果になる。「首都以外の地方」と言う意味では大阪も鳥取も名古屋も香川も同じ筈だが、そうなると大阪や名古屋の声はより強く反映されるが鳥取や香川の声は反映されにくくなる。同じ国会議員なのにそれで良いのか?と言う別の「不平等」を生むことになるのだ。

また、「選挙無効」と言う判決を得たとしてもやり直し選挙は区割りを合憲になるように見直してから行わなければ意味はない。それまでの間どうするのか?それまでにかかる費用は全て国民の税金から出せと言うのか?裁判所が「違憲状態」を認定しても「即座に選挙無効、やり直し」と言わない理由だ。で、あれば勝訴しても「訴えの利益」と言う面ではかなりの疑問があるが、それでも拘る理由は何か?

弁護士グループは「平等な一票」の実現の為には「小選挙区制では無理」と主張している。つまり中選挙区制等の他の選挙制度を導入しろ、と言っている訳だ。小選挙区制は大政党に有利、と言われている。言い換えれば「野党に有利な選挙制度にしろ」と言っているに等しい。弁護士も何故か思想が左に傾いた人が多い傾向がある。そういう狙いだったとしたら単純な正義感からではなく「政治的意図を持った」「権利の濫用」と見る事も出来る。で、あればそれはそれで問題だ。

毎年人口の増減や移動を踏まえて区割りを見直し続けるのは困難が伴う。ましてや衆議院のばあい、解散があるので選挙時期を正確に予想する事はほぼ不可能だ。裁判所が自らの判断を見直すか、選挙無効の明確な基準を出すかして、要件を満たさない訴訟は却下する、等の対応がなければならない。「一票の格差」を小さくする努力は必要だが、訴訟訴訟と乱発する弁護士グループの姿勢にも疑問や問題があるのである。