新型護衛艦「かが」の命名にケチを付ける愚
※新型護衛艦は「かが」と命名された。その名に相応しい威容である。
…27日に進水式が行われた海上自衛隊の新護衛艦、「いずも型」の2番艦にあたるその護衛艦は「かが」と命名された。言うまでもなく大東亜戦争時の帝国海軍の空母「加賀」の名を受け継いだものである。それを伝えるニュースは各報道機関が伝えているが、その中にはどういう訳か以下の記事の様に「『かが』と言う命名は支那を刺激する可能性があるので「反日」の象徴にされぬよう配慮が必要だ。」と言う主旨の記事が散見される。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150827-00010002-norimono-bus_all
※「ひゅうが」と「いずも」の比較。
根底からおかしな視点の記事だと言わざるを得ないだろう。自国防衛の為の護衛艦の命名に何故他国に配慮する必要があると言うのだろうか?そんな事を言い出したら護衛艦の命名に一々他国の干渉を許すことにも繋がりかねない。大東亜戦争時の帝国海軍の軍艦の名を再び新造護衛艦に命名する事よりもそっちの方がよっぽど問題である。
一度命名した軍艦の名を再び新造の軍艦に命名するのは世界的に見ても珍しい事ではないだろう。アメリカで言うなら例えば「エンタープライズ」と言う名の軍艦は検索すれば何隻も出てくる。余程詳しくないと混同してしまう人もいる筈だ。名前の由来やその最期はどうあれどの時代にもその名を冠した軍艦が存在する、言わばその国の海軍の象徴的な名前があっても何ら不思議のない事である。
※帝国海軍で最も実戦経験豊富だった空母「加賀」。
さて、空母「加賀」であるが、元々は戦艦として建造されていたものが空母へと変更になった経緯がある。空母であるにも関わらず当時戦艦にしか付けられなかった「旧国名」が名前になっているのはその為である。元々戦艦として建造されていた為、戦闘機の搭載数は帝国海軍の空母で最大を誇っていた。運用当初は三段式の飛行甲板を有していたり、空母であるにも関わらず20cm主砲を搭載していたり…と単体でも巡洋艦並みの攻撃力があったが、運用上の問題解決の過程で空母は搭載機の運用に特化するのが最善、と結論付けられたのか、現在の空母にも繋がる形になった。
※「加賀」は当初はこの様な姿だった。改装後、上記の画像の様な姿になった。
第一次上海事変が初陣で、これが史上初の空母の実戦参加である。初の敵機撃墜記録も勿論「加賀」の搭載機によるものである。
最期はミッドウェーで沈没してしまうが、それまで「加賀」は帝国海軍中最も実戦経験豊富な空母として活躍した、と言えるだろう。
その名を新型護衛艦に名付けるのが支那を刺激する、と言いたい人にはそういう経歴や一番艦「いずも」の際に支那が反発した事を引き合いに出したいのだろう。しかしその時点で「発想が支那に媚びている」と言わざるを得ない。
現在日本に最も軍事的脅威を与えている国は一体何処なのか?支那以上に日本に軍事的脅威を与えている国があるのか?そういう相手に配慮している時点で戦わずして負け、に等しいのではないか?それなら最初から護衛艦を作る意味がない。本末転倒ではないのか?
重要なのは「自国の安全保障は自国の責任で行う」、と言う事である。一々他国に配慮した命名を護衛艦に行っているのではその最低限の事も果たせていないのと変わりない。命名を批判する記事を書く前にそういう発想は無かったのだろうか?その意味では逆に寧ろ妥当な命名であると言えるだろう。
※イージス艦「こんごう」。その命名にケチを付ける程アメリカのケツの穴は小さくない。
さらに言えばアメリカ以外で初めてイージス艦を保有したのも日本だが、その最初の命名は「こんごう」である。言うまでもなく大東亜戦争時、最も奮闘した戦艦「金剛」の名を受け継いだものだ。当時アメリカも「金剛」(と言うより「金剛型」)には相当煮え湯を飲まされているが、その名を虎の子のイージス艦に命名したからと言ってアメリカが文句を付けただろうか?因みにイージス艦の2番艦の名も「きりしま」。当然戦艦「霧島」から名を受け継いでいる。アメリカには配慮しなくてもいいが、支那には配慮が必要だと言うのは単なるダブルスタンダードでしかない。その点でも「護衛艦の命名に支那に配慮せよ」など言うロジックが破綻しているのは明らかであろう。そういう下らない事は考えずにこれからも新造されるであろう新型護衛艦の命名には十分な思い入れを以て命名して頂きたいものだ。
※「大和」と「武蔵」。流石に余程の軍艦でもこの名前だけは命名しづらいだろう。
…余談だが流石に「大和」「武蔵」に限っては永久欠番同然の扱いだと聞いたことがある。その名を受け継がせる事が難しい命名と言うのも存在する様だ。