恐竜は恒温動物だった?変温動物だった?論争に決着を付ける画期的な技術。

イメージ 1


※最大級の恐竜と人間の大きさ比較…デカイ。

…人類が過去にこの地球上に「恐竜」と呼ばれる生物が存在していた事を認識して以来の科学論争に決着が付く糸口になるかも知れない。

イメージ 12


イメージ 13



http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151014-00000024-jij_afp-sctch

現生生物で恐竜に最も近いのは鳥類とワニである事に異論を唱える人は殆どいない、と言っていい。鳥類は恐竜の生き残りの子孫、ワニは共通の祖先から分岐した生き残り、と言うのがほぼ確立された見方である。だがワニは変温動物、鳥類は恒温動物である。では恐竜は?と言うのが随分長い間論争になっていた。

人類が「恐竜」と名付けた生物を知った当初は爬虫類の仲間だと考えられていた。従って恐竜は変温動物である、と言う見方が支配的であった。しかし、1970年代当りからそういう考えでは説明しきれない恐竜も発見され始め、「少なくとも一部の恐竜は恒温動物ではないのか?」と言う考えが出て来た。
イメージ 2


福井県立恐竜博物館のデイノニクスの骨格。
イメージ 6


ジュラシック・パークより
イメージ 7


ジュラシック・パーク3より。劇中では「ラプトル」だったが、これは当時デイノニクスとヴェロキラプトルを同一種とする学説があり、ジュラシック・パークでこれを採用したため。
イメージ 3


※現在の推定復元図はこんな感じ。殆ど鳥である。

そのきっかけになったのが「デイノニクス」と言う恐竜である。映画「ジュラシック・パーク」シリーズでお馴染みのヴェロキラプトル」を含むこれらの種の恐竜はとてもじゃないが変温動物とは思えない身体であった。その後の研究でこの種を含む肉食恐竜には鳥類同然の羽毛を持っていた事が明らかになり、これが「恐竜恒温動物説」の決定的証拠、とまで言われた。
イメージ 4


※筆者所有のヴェロキラプトル骨格模型。1/2サイズなのだが…
イメージ 5


ヴェロキラプトル推定復元図。やっぱり鳥同然でである。

しかし、恐竜を恒温動物とすると食料問題、と言う問題が出てくる。一般的に恒温動物は変温動物よりも大量の食料を必要とする。体温発生にエネルギーを使うからだ。恐竜には体長数十メートル、体重数十トンに達する種もいた。これらの恐竜がどれだけの食料を必要とするのか?しかも群れで行動していたと言うから更に事態は悪化し、恒温動物だとすれば周囲一帯ペンペン草の果てまで喰い尽くしても足りない程の食料が必要になる。またこれらの種の頭部に十分な血液を送る心臓はどれだけ強靭なものが必要になるか?幾ら心臓が強靭でもその血圧に毛細血管が耐えられなければ生存出来ない…と言った問題が山積みだったのだ。
イメージ 10


※こんなのが群れで行動していたら食料がどれだけあっても足りない…が現実に生存していたのだから食物連鎖のバランスは取れていた筈だ。

…と、イントロダクションが長くなってしまったが、本題。
イメージ 8


※筆者所有のオヴィラプトルの卵の化石(レプリカだが)。発見当初はプロトケラトプスの卵とされた為、これと共に化石が見つかった恐竜はオヴィラプトル(卵泥棒)と言う不名誉な命名になったが、実際は自分の卵を抱いていただけだった。

化石で見つかった恐竜の卵の殻の組成から産卵時の母親恐竜の体温を推定しようと言うから研究方法の発達には驚く他無いが、その結果はサンプルの一つ、ティタノサウルスの場合は体温38度前後であったと言う結果が出た。人間とそう変わり無い。もう一つのサンプル、オヴィラプトル科の恐竜の場合は32度未満であったと言う。こちらは随分低い体温に思えるが、この化石の産地であるモンゴル・ゴビ砂漠の当時の気温は26度前後ではないかと推定されている。だとすれば周囲の気温よりは高い。即ち自身で体温を作り出す能力があった事を示唆していると言えるだろう。
イメージ 9


※ティタノサウルスとオヴィラプトル。

しかし、論文主執筆者の米カリフォルニア大学ロサンゼルス校のロバート・イーグル氏は、今回の研究結果について「少なくとも一部の恐竜が、現代の鳥類のように完全な内温(恒温)動物ではなかったことを示唆している」と語り、「恐竜は、現代のワニ類と現代の鳥類の中間的存在だったかもしれない」としている。つまり自身で体温を作り出す事は出来てもそれを維持する能力が備わっていなかったか、不完全であったか、である。

完全な恒温動物でも変温動物でもない…随分玉虫色の結論にも思えるが、恐竜が進化の過程で体温を維持するべく編み出した工夫が「巨大化」や「羽毛」だったとしたら…

今回の「卵の殻の組成から母親の産卵時の体温を推定」と言う研究はその着眼点も、それを可能にする技術も物凄い物だ。更なる技術の発展で更なる発見が期待出来るかも知れない。恐竜は今でも研究者のみならず一般の人々の夢や想像、ロマンを掻き立ててくれる存在である。我々の知らない過去の生物について新たな発見が続々となされるであろう。それがまた新たな夢や想像、ロマンに繋がるのだと思う。恐竜は絶滅してしまったが、その魅力は永遠の物だと言えるであろう。
イメージ 11


※現在でも恐竜の出てくる映画もこうやって作られ、大ヒットする。