市民の武装はテロ対策になるのか?

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ドナルド・トランプ氏。過激な発言で物議を醸す御仁だ。

過激な発言で物議を醸すものの、来年の米大統領選挙で共和党の有力指命候補とされるドナルド・トランプ、フランス・パリで起きた同時多発テロについての発言もやはり物議を醸すものだった様だ。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151115-00000024-jij_afp-int

「パリの場合、世界で最も厳しい銃規制が課せられており、悪人を除いては誰も銃を所持していない」

「(被害者ら民間人は)誰も銃を所持していなかった。容疑者たちは被害者たちの一人ずつに向けて発砲していった。その後、警官隊が到着して大規模な銃撃戦となり、最後にはテロリストたちを射殺した」

「私は言いたい。言いたいことを言っていいんだ。もし人々(=被害者ら市民)が銃を所持していれば、銃の所持が認められていたならば、事態は全く違っていただろう」

如何にもアメリカンらしい物言いである。話のオチは銃か。

…確かに彼の言いたいことは是非は別にして理解はできるだろう。要は「仮にパリ市民が銃を携帯しており、テロに遭遇した場合、その市民の銃でテロリストを射殺するなり行動不能に出来ていればここまでの悲劇にならなかった可能性だってあったのではないか?」と言う所に落ち着くのだろう。

これを当然と思うのはアメリカンならではの思考なのだろう。日本人としては「!?」といった具合に問題視するだろう。この記事についてのコメントを見てもそういう印象を受ける。

だがこれは「市民の武装」に関する日米の価値観の違いであると言えるだろう。同じ「自由と民主主義」と言う価値観を共有できる同盟国と言えどもこれは「埋め難い意識の差」である。
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※日本映画の名作「七人の侍

かつては日本も庶民が武器を携帯していた。武士のそもそもの始まりは「自分達の土地を自信で守る為自ら武装した事だった筈だ。戦国の世では農民は同時に兵士でもあった。故に当然武器を携帯していた事は言うまでもない。名作映画「七人の侍」は野盗に農作物を奪われる農民が七人の野武士を雇って対抗する話だが、あの映画の舞台が戦国の世であれば農民達はそんな事はしなかったであろう。間違いなく自力で立ち向かっていた筈だし、下手すりゃ野盗を返り討ちにして話はそこで終わる。近くで合戦があれば参戦もすれば合戦が終われば「落武者狩り」までしていた程逞しかったのだ。野盗を返り討ちにする農民が居たとしても不思議はない。
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※当時の農民は鎌や鍬、鋤を武器にしてでも闘おうとした。
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※まともな武器を持てば屈強な兵士に早変わり。

実際の歴史では織田信長が兵士を専属化した。これにより軍を自在に動かせると同時に農民を農業に専念させ、戦のない時には兵士が治安維持に当たる体制を作ったと言える。それまでは合戦と言うのは農業に影響のない時期に行われていたのだ。その後豊臣秀吉は「刀狩」で武士以外を武装解除した。支配層のみが武装して治安維持を担当する代わりに平民は武装しなくて良い治安の良い社会を作ったのだ。これが現在でも生きている。

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武蔵坊弁慶。僧兵の代表格でもある。

宗教勢力でも同様だ。武蔵坊弁慶を見れば明らかだがかつては坊主だって武装していた。僧兵による強訴等も日常茶飯事で白河法皇が「思いのままにならない」物の一つに挙げた程だった。だがこれも信長・秀吉の時代まで武装解除して大人しくすれば信教の自由を認める」と言った具合で武器を手放していった。

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※この時代には「市民が武装する」理由があったアメリカ。

ところがアメリカではそもそも建国からして「独立戦争」の結果である。その後「西部開拓時代」となるが、そう言えば聞こえは良いかも知れないが裏を返せばネイティブ・アメリカンの土地の侵略である。奴隷解放をしたリンカーンだって黒人奴隷は解放したがネイティブ・アメリカンの弾圧は行っているのだ。勿論侵略された側が黙っている筈もなく、当然反撃に出る。何時そうなるか判らない状況でそんな時に保安官が役に立たない、なんて事は十分あり得る。だからアメリカでは「自身の身は自身で守る」と言う考えで市民が銃を携帯し、その意識が未だに浸透しているのであろう。

そういう観点から見ればアメリカは日本程国家が治安維持に責任を以て市民の安全を担保している、とは言い難いのではないだろうか?トランプは「シカゴのように、厳格な銃規制を課している米国の都市では、結果として犯罪率が高い。」と言う指摘をしているが、では何故市民が全く武装していない日本の治安が保たれているか?と、聞き返してやりたい。単純に武装している市民が少ないだけでなく警察の治安維持が手薄だから狙われるのではないのか?
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※だからと言ってこういうのを作れとまでは言わない。

アメリカにはアメリカの事情があるのだろうが、それがそのまま他国で通用するとは限らない。テロが市民の武装で防げるならば何処の国でも苦労はしない。政府が主導してテロ対策を実行する体制は必須である。残念ながら日本はスパイ防止法もなければ共謀罪を適用して一網打尽にお縄にも出来ない。現状では一度テロを起こされたら日本は一堪りもない。これらの法整備が緊急で必要なのではないだろうか?テロは何時起こされるのか、予想は出来ないのだから。
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スパイ防止法やテロ共謀罪の法整備は緊急で必要である。