「ユニコーン」の正体はサイ?

イメージ 1


※ベタなイメージの「ユニコーン」。

額に一本の角が生えた馬として描かれる、「ユニコーンと言えば御存知の通り架空の生物である。当然ながら何がしかのモデルになった生物がいた、と考えるのは自然な成り行きであろう。かつては「イッカク」と言う生物の角(正確には歯の変形したもの)が「ユニコーンの角」としてヨーロッパで売買されていたが、あちらさんは海生生物、クジラの仲間である。どうやらモデルは「エラスモテリウム」と言うケサイの仲間らしい。
イメージ 5


※イッカクの牙は「ユニコーンの角」として売買され、江戸時代の日本にも輸入されていた。
イメージ 2


※エラスモテリウムの想像図。角、デカ過ぎだろう。

しかし、その「エラスモテリウム」は35万年前に絶滅した、と考えられていた為、人類が目撃して記録に残すことは極めて困難だったのではないか?と言うパラドックスがあったのだが、この度化石の発見により、エラスモテリウムが2万9千年前まで生存していたのではないか?、という研究結果が発表された。
イメージ 3


http://www.sankei.com/smp/wired/news/160403/wir1604030001-s.html

…これが事実であれば、人類(ここでは新人)とエラスモテリウムが共存していた時代と地域があった可能性が出てくる。エラスモテリウムには現在存在するサイよりも明らかに巨大な角があったと考えられているが、このインパクトある角のある生物の姿が後世に「ユニコーン」として伝わった、と言うのだ。…何処でサイが馬になったのかは謎のままだが…
イメージ 6


※話の何処でサイが馬になったのだか…?
イメージ 7


※エラスモテリウムの全身骨格。
イメージ 4


※他にもモデルの候補にされている「オリックス」。

文献に最初に登場するユニコーン」はインドにいると考えられていたそうだ。最後までエラスモテリウムが生存していた、と考えられている場所はカザフスタンヨーロッパから見れば方面としてはともかく、近隣と言えるかは微妙な位置関係ではないだろうか?…とは言えインドや中央アジアとヨーロッパの間に古代から話が伝わるルートがあった、とも考えられる。またユニコーン」は非常に獰猛な性格であるとされていた。人間の知恵と工夫で殺すことは出来ても飼い慣らせない、なんて描写が多いようだ。ユニコーン」の正体がサイであるならばそういう描写に何故か説得力を感じるのは不肖筆者だけだろうか?

…となると、エラスモテリウムが絶滅したのは人間の仕業なのであろうか?と言う疑問も出てくる。文明が始まる以前から人類によって絶滅させられた生物は多数いる様だが、エラスモテリウムもその犠牲者なのだろうか?復元図に描かれる角は人間にとって脅威以外の何物でもないが、あの角に串刺しにならずにこの生物を狩る知恵が2万9千年前の人類にあったのだろうか?新たな事実が判っても新たな疑問も出てくるのである。

イメージ 8


※人間の大きさと比べると角は脅威以外の何物でもない。刺されたら御陀仏だ。


…思うにエラスモテリウムの剛毛は恐らく氷河期を乗り越えるための進化の結果なのだろうが、あの角は恐らく「過剰適応」なのであろう。マンモスの牙やオオツノジカの巨大な角と同じである。絶滅の原因は氷河期を乗り越えたはいいが、それが終わった後あの角がお荷物になったため、環境の変化に適応出来なくなった、とも考えられるだろう。古代にはまだ知られざる異形の生物が存在する。この様にそれらの生物が空想上の生物のモデルになった可能性は他にもあるだろう。人類の「想像力」が産み出した生物の正体、知って納得か、それとも失望か、いずれにしても興味は尽きない。
イメージ 9


※実際に発見された「ユニコーン鹿」。突然変異か頭に傷を負った結果らしい。