川内原発を政争の具にする愚

イメージ 1


イメージ 2


熊本地震を受けて先ず「川内原発稼働停止」を言い出した愚劣な人々。

熊本地震を奇貨にして「被災者の安全」や「その後」はそっちのけ「鹿児島県の川内原発を止めろ」と言う政治家、メディア、左翼連中は後を絶たない彼等の主張には原子力規制委員会の出したデータに反論出来る科学的根拠は皆無であると言って良い程だ。地震が収束した後の復興にも安定した電力供給は不可欠であるが、彼等はその辺りをどう考えているのだろうか?
イメージ 3


イメージ 4


イメージ 5


イメージ 6


イメージ 7


http://www.sankei.com/premium/news/160501/prm1605010025-n1.html

先日も記事にしたのだが、原発は稼働停止であれば安全なのか?」と聞かれたら「NO」と答える他ない。原発に関しては単純な「ON/OFF」で片付けられる問題ではないのである。
イメージ 8


原子力事故の国際基準。

原子力事故では原発敷地外に影響が出た事故」をレベル5以上に分類している。人類が今まで体験した「レベル5以上」の原発事故はスリーマイル、チェルノブイリ、福島の3例がある。その内、稼働中の原子炉が事故を起こしたのはチェルノブイリのみである。事故原因の違いはあれど、スリーマイルや福島の場合、原子炉は事故発生時点で停止していたのである。

チェルノブイリの原子炉は「黒鉛減速炉」と呼ばれるタイプで福島やスリーマイルの原子炉とは違うタイプである。炉心に炭を使用していた事、更に原子炉の手抜き工事も災いして「本来燃えない」筈の原子炉が燃えた。
イメージ 9


BWR原子炉の仕組み。

福島第一原発で事故を起こした原子炉は「沸騰水型原子炉(BWR)」と呼ばれるタイプで簡単に言うと核分裂で発生した熱を利用して水を加熱し、発生した蒸気でタービンを回して発電する仕組みの原子炉である。この蒸気には放射性物質が含まれるので、タービン建屋など発電に関わる全ての場所に放射性物質対策が必須となる。これに対して川内原発の原子炉は「加圧水型原子炉(PWR)」と呼ばれるタイプでこれは核分裂で発生した熱で水を加熱する所まではBWRと同様だが、BWRはそれで直接タービンを回すのに対してPWRではその蒸気で更に別系統の水を加熱し、その蒸気でタービンを回す。故にPWRではタービン建屋への放射性物質対策が不要で、放射性物質の汚染の範囲を抑えられる利点がある。但し、配管の構造が複雑になるため、保守の手間はBWR以上にかかる。しかし、その構造ゆえに福島第一原発事故同様の全電源停止状態でも、二次冷却水を循環し続けることで炉心を冷やし続ける事は可能なのである。
イメージ 10


※PWR原子炉の仕組み。

原子炉一つ取ってもこの様な違いがあるのだが、そういう認識の下で彼等は「川内原発を止めろ」と主張しているのであろうか?不肖筆者が気になるのはそこなのである。

また、核燃料の連鎖反応は原発の稼働を止めれば即座に停止する訳ではない。人類は残念ながら「核分裂を即時停止させる技術」を未だに習得していないのである。また使用済みの燃料棒は「使用済み燃料棒貯蔵プール」で冷却しなくてはならない。そしてそれには数年単位の時間が必要なのである。今日原発を止めたからと言って明日から安全になる訳ではないのだ。原子炉の燃料棒を全て撤去出来ていればある程度は「安全」と言えるかも知れないが、その為には原発を襲うであろう災害を数年前から察知していなければならないのである。それが出来るなら誰も苦労はするまい。
イメージ 11


福島第一原発では原子炉が停止していても事故は起きた事を忘れてはならない。

「使用済み燃料棒貯蔵プール」で冷却する期間もまた「数年単位」である。福島第一原発の3号機、4号機ではこの場所の冷却機能も喪失し、結果燃料棒の過熱、崩壊に繋がった。しかも4号機は定期点検で停止中だったのである。原子炉の運転が止まっているからと言って事故を回避出来るとは限らない実例でもある。原子炉が稼働しているか否かよりもこちらの心配をする方が遥かに意味があるのだが…
イメージ 12


川内原発活断層の分布。
イメージ 13


※同じ地震でも揺れは地盤の堅さで変わる。

また、川内原発は硬い岩盤上に設置されている。今回の熊本地震でも熊本県益城町で1580ガルの揺れを観測した。川内原発の基準地震動は620ガルである。倍以上の数字だけに危険に思えるかも知れないが、益城町でのこの数字は比較的軟らかい地表で観測された数字である。益城町では同一地点の地下にも観測機器が設置されていたそうだが、地下の硬い岩盤の中では同じ地震の揺れでも237ガルだったと言う。また、平成9年の鹿児島県北西部地震では川内市内でも地盤の軟らかい場所では470ガルを記録したが川内原発では同じ地震で観測された揺れは68ガルだったと言われている。この様な点は停止を主張する人は考慮しているのだろうか?

…だからと言って原子力絶対だとか、原発は安全だ、等とは不肖筆者としては言えない。だが、原発の是非について考えるのであれば思い込みや感情論ではなく、核分裂の性質や原子炉のタイプの違い、等と言った観点を踏まえて議論するべきではないかと言いたいのだ。少なくとも災害を政治利用したりして「原発を止めるべきだ」と主張する姿勢には大いに違和感を感じるのである。先ずは原発に関する知見を深める事から不肖筆者としては始めたい。
イメージ 14


※原爆と原発は似て非なるもの。