ツタンカーメンの短剣は隕鉄製?

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ツタンカーメンの墓から新たな発見が…

ピラミッドを始めとする古代エジプト文明の謎は多くの人々を魅了しているが、又一つ、新たな謎が加わった様だ。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160602-35083662-cnn-int

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※これがその短剣の写真。まさか隕鉄から作ったとは…

「ファラオ」と呼ばれた古代エジプトの王で最も有名なツタンカーメン、そのミイラの右足付近に副葬品として埋葬されていた黄金の短剣、古代エジプト文明の出土品では珍しい鉄製の短剣なのだが、それどころか、その鉄は驚くなかれ、隕石(正確には隕鉄)を原料にして製造されたものだったと言うのだ。しかも刃こぼれどころか、腐食の痕跡もなく当時の最高水準の技術で作られた埋葬品である事は確実である。…一体どうやって作ったんだか?

ミラノ工科大学のダニエラ・コメッリ准教授とエジプト考古学博物館のチームが短剣の鉄の成分を分析、ニッケルやコバルトの成分比率から、「太陽系誕生直後の小惑星から落ちてきた隕石だ」と結論付けたのだ。

研究チームは紅海を中心に半径2000キロ範囲内で発見されたすべての隕石を調べた(!)のだそうだが、その結果、隕鉄は20個確認されたと言う。このうち、アレクサンドリア港の西の石灰岩台地で見つかった1個の隕鉄の成分が、短剣の鉄部分のそれと一致したという。

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ツタンカーメンの墓。隠し部屋があるとか…?

古代エジプトでは、鉄は殆ど生産されず、武器は基本的に青銅製が中心だったため、空から降ってきた隕鉄は「神からの贈り物」として珍重され、黄金よりもはるかに高価なものとして扱われたのだと言う。ツタンカーメン王の墓からは出土品が約2000点にものぼると言うが、鉄製品は唯一、この刀剣のみなのだそうだ。つまり、古代エジプト人は鉄を使う際、その鉄の由来を知っていた、と言う事にもなる。古代エジプトの王に相応しい逸品、と言えそうだ。

人類の文明と鉄の関わり、と言うと、古代シュメール文明が挙げられる。この文明は紀元前3800年あたりに突如出現した謎の文明である。文明の発達した形跡がないのに何故か現在に匹敵する正確な暦や、青銅の精製技術、白内障の治療法や二院制議会などを持っていた謎に満ちた文明である。また彼等は楔型文字、と言う文字も発明している。そして周辺民族の言語と関連性の見られないシュメール語なる言語を使っていたのだが、彼等もまた、鉄を使っていた事が確認されている。…但し、エジプト同様、隕鉄を加工したものだった様だが。

鉄鉱石を溶鉱炉で溶かして鉄を抽出する技術はヒッタイトともアッシリアとも言われるが、紀元前2000年頃のヒッタイトの都市遺跡からは製錬された鉄が出土していると言う。因みにツタンカーメンの在世時期は概ね紀元前1330年前後、残念ながらエジプトにはこの時点でその技術はなかったのだろう。古代エジプト人達は現代語で「空の鉄」と訳せる新たな象形文字に言及していたとも言われるが、今回の発見はその背景を解き明かす鍵になるかもしれない。
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エジプト文明の謎は尽きない…