無意味な原発停止要請

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菅直人の真似に意味はないのだが…

鹿児島県知事の三反園訓は7日に九州電力の瓜生道明社長に対し、稼働中の川内原発を即時一時停止するよう再要請したと言う。
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160907-00010009-nishinp-soci

稼働中の原発を止める権限は県知事にはない。しかし三反園訓は8月末に4月の熊本地震を踏まえ、九州電力川内原発を即座に停止した上での点検・検証を求めたが、そもそも川内原発の1号機は10月6日から、2号機は12月16日から定期検査に入る予定である。この検査スケジュールは知事要請の前から決まっており、九州電力側は予定通り実施する定期検査の中で、三反園知事の求める原子炉容器や配管などの設備点検を実施するとして要請を拒否した経緯がある。

その他の要請、「県民不安解消に向けた情報発信」については、迅速で丁寧な情報発信に努める姿勢を伝達する方針。また「避難計画への支援体制の強化」に関しては、避難車両やマンパワーを強化する方向で調整していると言う。

更に最も対応が難しいとみられる原発周辺の活断層調査については、九州電力側はこれまでも

川内原発再稼働に向けた規制委の審査の中で検証がなされた」

としており、改めて知事側の理解を求める方針だと言うが、こういう「原発停止ありき」の人間の前では専門家の知見がどうであれ関係ないであろう。三反園訓原子力規制委員会の誰よりも原子力に詳しいのであれば話は別だが…
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※どの道定期点検で止まる。

…以前にも何度か述べた事ではあるが、原発はそもそも「停止していれば安全」と言うものではない。自然災害、特に地震津波による原発事故、即ち福島第一原発事故同様の事態になる事を
危惧しているのであれば、その危険性は原発が稼働しているか否かとは余り関係がない。

何故ならば核燃料の連鎖反応は原発の稼働を止めれば即座に停止する訳ではないからだ。人類は残念ながら「核分裂を即時停止させる技術」を未だに習得していないのである。また使用済みの燃料棒は「使用済み燃料棒貯蔵プール」で冷却しなくてはならない。しかもそれには数年単位の時間が必要だ。使用された直後の燃料棒はその高温ととんでもなく大量の放射線で手に負える代物ではないのである。故に今日原発を止めたからと言って明日から安全になる訳ではないのだ。
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BWR原子炉の構造
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※PWR原子炉の構造

また福島第一原発で事故を起こした原子炉は「沸騰水型原子炉(BWR)」と呼ばれるタイプで簡単に言うと核分裂で発生した熱を利用して水を加熱し、発生した蒸気でタービンを回して発電する」仕組みの原子炉である。この蒸気には放射性物質が含まれるので、タービン建屋など発電に関わる全ての場所に放射性物質対策が必須となる。これに対して川内原発の原子炉は「加圧水型原子炉(PWR)」と呼ばれるタイプでこれは核分裂で発生した熱で水を加熱する所まではBWRと同様だが、BWRはそれで直接タービンを回すのに対してPWRではその蒸気で更に別系統の水を加熱し、その蒸気でタービンを回す。」構造の原子炉である。故にPWRではタービン建屋への放射性物質対策が不要で、放射性物質の汚染の範囲を抑えられる利点がある。但し、配管の構造が複雑になるため、保守の手間はBWR以上にかかる。しかし、その構造ゆえに福島第一原発事故同様の全電源停止状態でも、二次冷却水を循環し続ける事さえ出来ていれば炉心を冷やし続ける事は可能なのである。つまりPWR型原子炉の生命線は二次冷却水の循環機能をどう確保するのか?であり、勿論九州電力には周辺住民にそれをどう明確にするのかが求められる。…しかしどうも報道を見る限り三反園訓にはそういう理解があるとは思えない。それでいてどうして専門家の知見を否定出来ると言うのだろうか?
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福島第一原発では原子炉が止まっていても事故は起きた。

福島第一原発の3号機、4号機では「使用済み燃料棒貯蔵プール」の冷却機能も喪失してしまい、結果燃料棒の過熱、崩壊という事故に繋がった。しかも4号機は定期点検で停止中だったのである。原子炉の稼働が止まっているからと言って原発事故を回避出来るとは限らないのだ。原子炉が稼働しているか否かよりもこちらの心配をする方が遥かに意味があるのだが、果たして三反園訓にそういう理解はあるのだろうか?

また川内原発が想定している「基準地震動」は620ガルである。「1ガル」とは1秒あたりに秒速1cm加速される速度変化を表す。単純に重力加速度Gを「ガル」に換算すると980.665ガルになる。故に川内原発の基準地震620ガルとはおよそ重力の6割程の力で上下左右に揺さぶられる強さであると考えればイメージしやすいのではないだろうか?しかもその620ガルの根拠は?と言うと、そもそもの基準地震動は480ガルだったのを東日本大震災を受けて「南海トラフ沖縄トラフの連動する大地震」、と言う現実味のない想定で550ガルに引き上げた。それでも原子力規制委員会が納得しないので620ガルに設定した、というのがその経緯らしい。因みに東日本大震災福島第一原発が襲われた揺れは550ガルだったのだが…
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原子力に理解があるとは思えない。

科学的知見を無視した政治的な理由での原発停止要請、と言う悪例は言うまでもなく菅直人がその原因である。あんな愚劣な人間の真似をしてどうすると言うのか?また、川内原発の運転差し止め訴訟で明らかになったが、原発を止めると1日あたり5億円の損害が発生すると言う。本気で原発を止める、と言う信念があるのであればそれを払った上で「原発停止」を口にしてはどうか?要請するだけして後の損害は知りません、では九州電力が納得する筈もない。政治的理由で原発を止めるのであればそれ位の覚悟は必要だ。三反園訓には是非ともその「覚悟」を見せて頂きたいものである。
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原発を止めると1日5億円の損害が発生する。それどうするの?