ゴカイの血液が人間を救う?

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釣りが趣味の方には馴染みが深い動物である「ゴカイ」、釣り餌としては定番だ。しかし、釣りをしない人にとっては全く馴染みはなく、ゴカイを食べよう、なんて人はほぼいない、と言って良い。そんなゴカイだが、「人間の救世主」となる可能性がでてきた、と言うのだ。コレには驚いた。

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ゴカイは自然界でも魚の餌になってしまう存在だが、生命力の強さは折り紙付きだと言える。その理由はゴカイの体の側面にはえらが複数ついており、満潮時、海の底に沈んでいる間に多量の酸素を蓄える事で、仮に干潮で水から出ても8時間以上も生き延びる事が出来る程なのだと言う。

何故体長25cm程のゴカイがそれだけの酸素を蓄えられるのか?と言うと、

「ゴカイのヘモグロビンはヒトのヘモグロビンの40倍以上の酸素を肺から各組織に運ぶ事が出来る」

と、言う事が研究の結果判ってきたのだ。しかもその成分は、ヒトのヘモグロビンとほぼ同じであるにも関わらず、ゴカイのヘモグロビンは血液中に溶けた状態で存在する。ヒトの場合、ヘモグロビンは赤血球にあるため、輸血に際して血液型の違いが問題になるが、仮にゴカイの血液、と言うかヘモグロビンを医療分野で活用できれば

「血液型の問題をクリア出来、万能血液の誕生につながる可能性もある」

敗血性ショックに対処でき、移植用臓器の保存にも役立つ」

「移植した皮膚の保護や骨再生の促進に役立つ」

等と医療分野での大革命を引き起こす可能性が示唆されているのだ。…実現できればノーベル賞は間違いないだろう。

ゴカイの血液に注目が集まったのは2003年の欧州での狂牛病の流行と、HIVウイルスの蔓延で血液が不足した事がきっかけだったのだと言う。2006年には先述した様なゴカイの血液の特性が実証され、2015年には初めてフランスで行われた腎移植10例にゴカイの血液が使用された。現在フランス全土で60人の患者が臨床試験に参加しているのだと言う。

言うまでもなく最大の難関は「安全性の実証」である。ゴカイのヘモグロビンを人間の体内に取り入れた事で、どんな副作用が起きるのかなど、誰にも予想は出来ない。副作用を発症するのが数年後、数十年後、なんて可能性だって「ない」とまでは言えない。臨床試験の結論は「慎重の上に慎重」を重ねて出して貰うよりないが、実現すれば

「アレルギーの危険を回避出来る上に血液型に左右されない万能血液」

として医療現場や災害救助活動に、役立つ日が来るかもしれない。見た目はグロテスクだが、ゴカイも中々凄い生物だと言える。この機会にゴカイに対する誤解を解いて頂ければ幸いだが、それでもこの生物を「可愛がる」人は「極少数」なんだろうなぁ…きっと。