追い詰められている金正恩
と、「アメリカ相手に有利に交渉を進める」狙いがあるのは明白だ。「先核放棄、後補償」方式や「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」を主張しているボルトン大統領補佐官を名指しして非難している事からこれらの方式が北朝鮮にとって「受け入れ難い」のはまず間違いない事だ。
金正恩が「先核放棄、後補償」方式を受け入れないのはリビアのカダフィの例があるからだろう。金正恩としては「カダフィの二の舞」は絶対に御免だがそれらの主張はアメリカの「交渉のベース」でもある。とは言え、正面切ってトランプに対し「拒絶」を伝える度胸は金正恩にはないのだろう。と、なるとこの様な「盤外作戦」しか選択肢はない。金正恩が「追い詰められている」裏返しとも言える。
アメリカは既に日本に
「米朝首脳会談が決裂なら軍事攻撃」
と伝えており、それは報道されている。金正恩がアメリカの要求を呑めば「体制が保証される」だろうが金正恩は「独裁者」である。その「独裁者」が他国の要求を全面的に呑む、と言うのは「究極の屈辱」でしかない。しかもそれは受け入れた瞬間、全世界に情報が拡散される。北朝鮮の様な専制国家では国内向けの報道は誤魔化せたとしても他国からの情報流入を完全に遮断するのは限り無く不可能だろう。万が一そんな金正恩の姿が北朝鮮国民の知る所になってしまえば反乱の引き金になりかねない。
例え支那がバックにいる、と言っても会談して現状を動かさない限り制裁が緩和される事はない。支那とて制裁を無視するにも限度があるだけに習近平とのパイプが出来たからと言ってもそれは根本的な解決にはならない。勿論時間を稼いだ所で制裁緩和、と言う観点では何にもならない。トランプとの会談をすっぽかせば確実にトランプを怒らせる。それをやったらどうなるかは金正恩自身が誰よりも理解している筈であろう。つまり「選択の余地」は殆どないのである。そういう状況を作り上げた安倍首相の外交恐るべし、と言えよう。
唯一の望みは虚勢に騙されて勝手にアメリカが譲歩する事だが、それも望みは薄い、としか言い様はない。一見強気な金正恩だが、冷静に分析すれば追い詰められているのは明らかである。それを理解しないマスコミに騙されてはならない。現在北朝鮮を取り巻く状況を活用してジワジワと締め上げるのが最善手である。金正恩の断末魔は遠くなさそうだ。