トランプ大統領は金正恩を「試した」のか?
※何があって会談が物別れに終わったのか?
2回目の米朝首脳会談は前日の友好ムードから一転、
「何も合意のないまま」
途中終了、と言う意外な結末を迎えた。前日の夕食会では
「(今回の会談が)1回目の首脳会談と同じか、もっとすごいだろう」(トランプ大統領)
「すべての人々が歓迎するような立派な結果のために最善を尽くす」(金正恩)
と、「何らかの合意」を期待させる発言があった上、ホワイトハウスは
「28日に共同宣言に署名する見通し」
とまで発表していたにも関わらず、だ。
その理由、と言うのはアメリカは寧辺の核施設に加え、「カンソン」と呼ばれる秘密のウラン濃縮施設の存在や、東倉里の他にも未公表の弾道ミサイル基地が約20カ所存在している事を把握しており、それらも申告の対象にする様要求したが、寧辺の核施設の廃棄と査察受け入れで経済制裁の全面解除を要求した金正恩との折り合いが付かなかった、と言われている。
通常なら首脳会談の前段階として実務者協議が行われ、大まかな話はそこで大筋合意、となり、首脳会談で追認し、共同宣言等の形で公表される事になる。しかし、今回その実務者協議は金正恩がハノイへ出発する直前に始まった。その時点で時間が足りない。その意味では失敗は目に見えていた、とも言えるが、
「失敗を前提にした首脳会談」
とは考え難い。通常ならそうだが、今回、トランプ大統領は「敢えてそうした」とも受け取る事も出来るのではないか?とも思えるのである。
に期待、若しくはその可能性に「賭けていた」様子が窺える。しかし会談でアメリカ側から
「秘密の核施設やミサイル基地の存在」
を指摘され
と、言わしめる程の醜態を晒してしまった。彼我の情報収集能力の「圧倒的な差」を見せつけられた形になる。また、合意に期待を抱いて会談に臨んだが、その本番で「ちゃぶ台返し」を喰らった形にもなる。いずれにせよ結果として
「核・ミサイル実験は行わない」
と言う言質を取られただけで自身が得た結果は皆無だった。外交としては「完全に失敗かつ敗北」と言えるが、自身が出て来てこの結果は「屈辱」以外の何物でもなかろう。
会談終了後の金正恩は明らかに不機嫌な様子が撮影されている。恐らく「何も結果が得られなかった」「思い通りにならなかった」と言う屈辱感と「アメリカにちゃぶ台返しを喰らった」と言う怒りが入り交じったものだと思われるが、かりそめにも「一国のトップ」であるならその「屈辱感」をどう克服するかが問われる事になる。また、合意直前(または直後)に裏切る、と言うのはこれまで北朝鮮が何度も「してきた事」であり、自分がそれを味わう事で自分達が今までしてきた事の意味は否応なく理解出来た筈であろう。トランプ大統領は「敢えてそうする」事で金正恩を「試した」のではないか?とも思えるのである。
それらを乗り越えて再び首脳会談が出来るのであれば「その時」こそ腹を割った話し合いが出来、
「誠意には誠意で応える」
「それ以上の『力』で叩き潰す」
と言う裏返しでもある。
…だとすれば今回「合意がなかった」事にも意味がある、と言う事にもなる。首脳会談で「ボールを直接渡した」「その回答をどうするのか問う」事で金正恩の意思を「試した事」それ自体がある意味では「会談の成果」だとも言える。コレに金正恩がどう応えるのか?トランプ大統領にとっても「危険な賭け」と言う側面もあるが
「首脳同士の信頼関係」