メイ首相退陣でも困難なブレグジット


※無念だったろう。

英国メイ首相が辞任する事になった。英国のEU離脱問題では残留派であったにも関わらず真逆の結果となる事が明らかな、そして非常に困難な問題と向き合う事になったものの、結果を出せず、与野党双方から「そっぽを向かれる」形での辞任劇となった。

「独り善がりで一部の側近の意見しか聞かない」
「交渉力がない」

等と酷評される様に本人の資質にも問題があった事は否めないだろう。だが、それでも非常に困難な問題に、それも本人の本音とは裏腹であるにも関わらず正面から立ち向かって行った姿勢そのものは評価出来るかも知れない。少なくとも難題から逃げる何処ぞの政治家にはそういう姿勢は見習って貰いたいものだ。


※混迷の責任がメイ首相にあるのは否めない。

「そもそも」英国のEU離脱は誤算の連続だった。EU離脱の是非を問う国民投票、当時のキャメロン首相は「残留」と言う勝算があったからこそ実施に踏み切った。だが結果は「離脱派」の勝利に終わり、引責辞任する結果になった。英国の混迷はここから始まる。

後任となったメイ首相は「悪い合意ならない方がマシ」と強硬離脱を煽って青写真もないのにEU離脱を通告。更に

・「絶対やらない」と言っていた筈の総選挙を行って与党保守党の過半数割れを招く
・最大の懸案である「北アイルランド国境問題」をほぼ独断でEUと基本合意
・独断で離脱案をEUとまとめ、反発した閣僚の抗議辞任を招く
・議会の同意が得られる見込みもないままEUと離脱協定をまとめて政治宣言を出す
協定案が可決されなければ、経済混乱を伴う「合意なき離脱」に陥ると脅迫同然に協定案への賛成を迫る
・以上の経緯にも関わらず議会で協定案が否決されるとTV演説で議会に責任転嫁
・3度も協定案が否決されても首相の座に居座り続けた
・最後は保守党に無断で野党労働党を取り込もうとするが、採決後に辞任、と明らかになって足元を見られて破談

と、本人の「秘密主義」と一貫しない言動、そして「交渉のまずさ」が英国の混迷を招いた事は否めないだろう。そういう点では「首相の資質」に欠けていたとも言える。

※そして「鉄の女」にはなれなかった…

だが、同情すべき点もある、と言える。そもそもEU離脱、と言う前例のない問題への対応、それも英国の場合、北アイルランド国境問題、と言う難題を抱えているのでは最初から「誰もが納得する離脱案」の作成は極めて困難、と言うより限りなく不可能に近い。北アイルランド国境問題は結局の所

・通常の越境手続きを行えば北アイルランド情勢が不透明になる
EUの提案を呑めば「英国自体の分裂」に繋がりかねない

と、どちらにせよ「英国の国益を毀損する」結果しか生まない。また、協定案では北アイルランド国境問題が移行期間内に解決出来ない場合、

「英国全体がEUとの関税同盟に残る」
「移行期間を延長する」

と言う選択肢があるが、関税同盟だとEUが他国と締結したFTAを無条件に受け入れる必要があり、

EU離脱によってEU加盟国としての権利はなくなるが義務は残る」

に等しい状況を生み、EUを離脱する意味が殆どなくなる。これでは賛同を得られないのも当然だ。

※とは言え本人なりに「英国のため」頑張った事に変わりはない

とは言え、ここでメイ首相一人が辞任した所で事態は何一つ変わらない。EU側が「再交渉には応じない」としている以上、「合意なき離脱」か「メイ首相の残した離脱協定案を呑む」かの2択しかない。後任首相候補には

※後任が誰でも難題は変わらない。

と言った名前が取り沙汰されているが何が起きるか予測不能な「合意なき離脱」で国内世論をまとめられるのか?それとも「議会で3度も否決された協定案を呑む」事で国民の理解を得られるのか?英国世論調査会社ORBの調査では「メイ政権のEU離脱交渉の支持率」はなんと「僅か8%」不支持率は「92%」と言うから離脱案が可決されたとしても国民の理解を得るのは絶望的だ。

出典

メイ首相は「ブレグジット」に翻弄されたある意味「不幸な宰相」だったと見る事も出来るだろう。だが、後任が誰であれ、「ブレグジット」に悩まされ、そして重大な決断を迫られる事に変わりはない。英国はこの問題にどう決着を付けるのか?EUが決めた期限は10月末。さて、この先どうなるか?成り行きは要注目である。