シングルイシューの限界点

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東京都知事選は舛添要一氏が当選した。除名処分にしたはずの自民党が支援と奇妙な構図ではあるが、争点の優先度を原発よりも福祉等と見た都民が多数だったのだろう。また基本的に原発しか言わない細川元首相や当選しても少数与
党が明らかな宇都宮氏、また政治家経験のない田母神氏と比べると厚労相も経験した舛添氏が消去法的に残るとも言える。舛添氏には都民の期待に応える都政を期待したいが、都議会最大会派の自民党とどこまで折り合いを付けられるかが問題だろう。

今回の都知事選、最大の話題を作ったのは細川元首相・小泉元首相の元首相コンビであろう。結果は瞬殺落選だったが、未だ健在(?)の小泉節で本来東京都には関係ない筈の原発問題をシングルイシューにしてある程度は争点にしてしまった。今回敗れた事で衰えを指摘する意見もあるが、小泉節にまだ影響力があったのは否めない。

都知事選で原発問題をシングルイシューにするやり方は筆者個人的には如何なものかと思うが、始末の悪いのはそれに便乗するメディアであった。

…特に投票日当日の東京新聞に至っては小泉元首相の請け売りなのか原発問題を問う選挙であるかの如く記事を載せていたが書いた人間の肩書きに見合わない愚劣さが満載であった。

筆者も以前このブログにて脱原発を論証した(脱原発は可能か?)。結論はそちらを参照頂きたいが、脱原発論には「代替エネルギーはどうするのか?」と言う反論が永久に付いて回る宿命がある。小泉元首相もこれに対する明確な回答はなく、結果的には煙に巻く形になっていた。勿論現状の様に火力発電フル稼動ならば莫大な燃料費、また環境問題と言う観点からは現在漏れてしまった放射線と大量発生するCO2やNOxとどちらが地球環境に影響を与えるかと言う話になる。
東京新聞にも答えはなかった。それどころかその答えがないのを認めている。

つまり後先考えず「脱原発ありき」なのである。代替エネルギーを明確にした実現可能な脱原発なら賛成出来るが代替エネルギーのない理想論の脱原発には反対せざるを得ない。それが果たして責任ある論説者のまともな言い分だと言うのだろうか?
理想論で原発問題が片付くなら苦労はしない。原発問題をシングルイシューにしてこれでは説得力がない。流石左翼新聞なだけの事はある。

そして結果舛添氏が当選し、次点の宇都宮氏と三位の細川元首相の得票数を足しても舛添氏の得票数に及ばない惨敗であった。舛添氏は徐々に原発依存を減らしていく立場であり、原発再稼動を否定していない。原発問題のシングルイシューならば再稼動に肯定的だった田母神氏の得票数を考慮すれば当面の再稼動容認派の完勝となるがそういう解釈でいいのだろうか?

選挙翌日の新聞を見ると原発否定派の朝日・毎日・東京の各新聞はそれでも概ね「脱原発派の声を無視するな。」「脱原発の声がこれだけあるのだから希望はある。」等と懲りずに曰う。無責任な報道だ。

これら左翼系新聞は先月の沖縄県・名護市長選挙を争点が普天間基地移設問題のシングルイシューとして扱い、反対派の当選を受けて「安倍首相は民意に従え」と言わんばかりのまるで鬼の首を取ったかの様なフィーバー振りであった。当然基地移設受け入れ派もそれなりの得票数があったが完全無視であった。

そのロジックでいけば今回の都知事選を原発問題のシングルイシューとして扱った以上都民の民意は少なくとも「原発即時0」ではないはずだが、そう潔く認めた論評はこれら左翼系新聞にはなかった。シングルイシューで記事にしておいて自らの主張に合致した候補が当選したら政府は民意を聞けとまくし立て、逆に落選してもその声に配慮しろとは虫が好すぎる。だから巷で彼等を「マスゴミ」と酷評する人々がいるが、その矛盾に気付いていないのは彼等自身である。