これで良いのか?参議院選挙制度改革?

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「何もしないよりはマシ」かも知れないが、大いに疑問が残るのは確かであろう。

参院の「一票の格差」是正に向け、隣接選挙区の合区などで選挙区定数を「10増10減」する公職選挙法改正案は24日の参院本会議で、自民党と維新の党など野党4党の賛成多数で可決された。自民党では、合区対象の4県選出の議員6人全員が採決を前に退席。連立政権を組む公明党は、10合区で定数を「12増12減」する改正案を共同提出した民主党などと反対した。与党内で対応が分かれるのは極めて異例だ。

改正案は衆院に送付され、28日に衆院政治倫理・公選法改正特別委員会で採決され、同日中の本会議で可決、成立する見通し。選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられる来夏の参院選から適用されることが確実となった。都道府県単位だった参院選挙区への合区の導入は、現憲法下では初めて。

10増10減の改正案は自民、維新のほか、次世代の党、日本を元気にする会、新党改革が23日に共同提出した。合区は、隣接する鳥取・島根と徳島・高知が対象で、格差は2・97倍となる。次々回の平成31年参院選に向けて「抜本見直しで結論を得る」とも明記した。

本会議では10増10減をめぐり、自民党鶴保庸介参院政審会長が「評価に堪えられると確信する」と強調。一方、公明党の西田実仁参院幹事長は「憲法が求める投票価値の平等に応えるには不十分だ」と批判した。民主、公明両党などの12増12減案は、10増10減案が先に可決されたため採決されなかった。》

http://www.sankei.com/politics/news/150724/plt1507240035-n1.html

国会議員の選挙が行われれば「必ず」と言って良いほど付いて回る「一票の格差」問題。これに対応すべく参議院選挙区での改正案が参議院で可決された。今回の改正案の目玉は都道府県単位での選挙区の区割りを見直して鳥取・島根と徳島・高知の「2合区」が誕生する事だと言えるだろう。これまで参議院選挙では各都道府県に最低1議席を配分してきたが、それが格差が解消しない原因と言うことでそういう先入観を排して改正を行った。

…とは言えこれでも格差は2.97倍と、最高裁判決が示した2倍の基準には及ばない。その上次々回の参議院選挙に向けて「抜本見直しで結論を得る」との付則付きである。要するに来年の参議院選挙限定の暫定措置、と考えた方が良さそうだ。

…これでは合区での選挙に何らかの想定外の問題が発生したりすれば振り回されるのはその合区の議員や有権者であろう。今回合区対象の自民党議員6人が造反したのも議員としての職責からすればどうかと思うがそういう気持ちになるのも理解できなくはない。

またもう一つ考えなくてはならないのが「参議院の存在意義」である。参議院衆議院と同じ判断では「追従」などと批判され、異なる判断では「ねじれ国会」と批判されてしまう厄介な存在であるとも言える。そんな参議院には不要論すら唱える者もいるが、その是非はさておき2院制の意義と言う観点から見れば衆議院とはまた違う存在価値を見いだしても良い存在であるとも言えるだろう。

基本的に衆議院は直近の民意を反映するものとされている。だから解散もあり、任期も参議院に比べて短い。逆に解散もなく、任期も長い参議院民意以外にどんな存在意義を見いだせるかが問題になる。もし何も無いと言うならばそれこそ参議院不要論である。1院制でも国会を運営している国は実際にある訳だから、その為の憲法改正などの面倒な手続きはさておき、やって出来ない事はないだろう。

だが2院制を導入する意味の一つに「政党政治の弊害」の解消がある。つまり1院制で過半数どころか圧倒的多数の議席を獲得した政党が現れた場合最悪やりたい放題になる危険がある。「数の力」の悪用である。こういう事態を防ぐべく参議院の存在意義がある。良識の府」「再考の府」等とも言われる所以だ。

一番手っ取り早く「一票の格差」を解消したいならば全国一選挙区で選挙を行う方法がすぐに思い付くだろう。しかしこれでは無所属候補の当選は選挙システムと関係なく極めて困難になるし、方法が比例代表だけでは小政党には不利になる。その他逆に議員定数増加で対応する案もあると言う。しかしこれだと議員歳費の増加にも繋がる為、これをやるなら最悪でも歳費の総額は変えずに一人当たりの歳費を削減するのが必須であろう。しかし例えばその結果参議院議員の歳費が衆議院議員の半分、とかなったら参議院議員が納得するだろうか?…元々政治は儲ける為に行うものではない、と言われればそこまでかも知れないが、だったらと衆議院議員の歳費も参議院議員に合わせると言い出すと殆どの衆議院議員は反対派となるのだろうな。また全国を幾つかのブロックに分けて大選挙区で選出する案もあると言う。筆者としては比例代表を廃止してこれが一番現実的ではないかと個人的には思う。参議院選挙の場合、半数改選の為、元々当選者が少ない。更にその中から比例代表の配分があるのだからこれを前提にしている限り小手先では解決する訳がない。また究極の案、ではないがアメリカ上院の如く全都道府県同一人数選出、と言う荒業も一部では提唱されている模様だ。参議院議員が地域代表的性格のものとして国会に送り込まれる、と言う点を重視したものでこれだと一票の格差」は完全に無視されるが、各都道府県単位で見れば地域格差はなくなる。ある種の割り切りだが、これは憲法43条で「国会議員は全国民の代表者」と、規定がある為、「参議院議員は各都道府県の代表者」と、してしまうとこれに抵触するとされている。これを回避するなら憲法改正しかない。どれも一長一短だ。

…結局は党利党略なども絡んで来るため、「全員が納得する結論」と言うのは難しいのだろう。そもそも議員定数の削減」と言う課題は10増10減でも12増12減でも全く触れていない。勿論これで良いわけがない。…参議院に限らず選挙制度改革には「政党や議員の覚悟」も同時に試されている。今回の改正案の付則にある「抜本見直し」がどのようなものになるのか?国会議員任せではなく、彼等を選ぶ有権者も共に考える必要があると言えるだろう。