アイソン彗星の悲劇

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実は筆者も密かに楽しみにしていた一人なのだが、「百年に一度の大彗星」とまで言われたアイソン彗星。機会があれば観測して見たかったが近日点通過時にどうやら核が蒸発・散逸した模様で生き残ったとしても僅かな核の残骸となり、期待は大きく外れる結果になってしまった。
近日点通過が太陽から僅か190万キロだったというからまず間違いなくアイソン彗星の核はこの時点で太陽のロッシュ限界域内にいたはずで太陽の強大な潮汐力と熱が原因であるのは疑いの余地はない。
…ロッシュ限界とはある天体の重力による潮汐力破壊の限界域である。この域内に入った天体はその重力による潮汐力で破壊される場合があるという。

それにしても太陽から190万キロというのは天体からすれば異常な接近である。太陽の直径が139万キロだと言われているから太陽の中心から測ると太陽の直径の2倍強である。この距離では太陽のコロナの中にいた事になる。コロナは希薄ではあるものの200万度にもなるという。彗星の核は雪だるまみたいな物だから普通に考えても納得(?)してしまうが…
同じ尺度で地球に当てはめたら地球から1万キロ弱の地点を通過するに等しい。静止衛星より近くに来たのだと考えればその恐ろしさが伝わってくるだろう。

似たようなケースの観測例があるというからまた驚く。1882年に観測された彗星は太陽表面から僅か46万キロの地点を通過したといい、昼間ですら観測出来たと伝わっている。(-17等級だったらしく、これは満月の明るさに匹敵)当然無事で済むはずもなく、核は4つに分裂し、それぞれが約500年から900年以上の超長期彗星となっている…らしいが、確認は不可能である。

太陽観測衛星によると年間10個程は彗星やら小惑星のような天体が太陽に近づき過ぎて消滅しているらしい。大きく報道されないだけで。

非常に珍しい現象かと思ったがそうでもないのだろうか?

そういえば20年程前にもシューメーカー・レヴィ第9彗星が木星に衝突した事件があった。矢張りこの彗星の核も木星の重力によって破壊され、悉く木星に衝突。その閃光や衝突の痕跡は地球から観測出来たという。

アイソン彗星の発見→軌道計算の過程でその可能性を指摘した学者もいたらしい。これが太陽でなく地球だったら…映画「ディープ・インパクト」ではないが、大彗星の可能性ありと浮かれる前に冷静になるべきだった。少なくとも筆者が今回アイソン彗星から得た教訓はそれだったな。