原発は停まっていれば安全なのか?

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※本当に稼働停止で安全なのか?

熊本地震を受けて「鹿児島県の川内原発を停止せよ」と言う声が上がっている。ネット上では「川内原発の稼働停止を求める」署名活動もあれば、逆に「運転継続を求める」署名活動もある。原子力規制委員会は今の所「安全性に問題なし」と言う見解だが、熊本地震の先行きが見通せない以上、不安な気持ちになるのも理解できなくもない。
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http://www.sankei.com/affairs/news/160420/afr1604200036-n1.html

原発再稼働賛成派の産経新聞によれば川内原発が想定している「基準地震動」は620ガルである。「1ガル」とは1秒あたりに秒速1cm加速される速度変化を表す。単純に重力加速度Gを「ガル」に換算すると980.665ガルになる。故に川内原発の基準地震620ガルとはおよそ重力の6割程の力で上下左右に揺さぶられる強さであると考えればイメージしやすいのではないだろうか?

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熊本地震震源域と川内原発の位置関係。

川内原発のそもそもの基準地震動は480ガルだった。しかし東日本大震災を受けて南海トラフ沖縄トラフの連動する大地震、と言う現実味のない想定で550ガルに引き上げた。それでも原子力規制委員会が納得しないので620ガルに設定したらしい。科学的根拠の曖昧な設定である。因みに東日本大震災福島第一原発が襲われた揺れは550ガルだったそうだ。と、なると620ガルの揺れ、とは震度7を超越した揺れである。また、川内原発の原子炉の緊急自動停止は160ガル以上の揺れを観測した場合だ。熊本地震川内原発のある場所で観測された地震は震度4、揺れは最大で8.6ガルだった。「数字上は」緊急自動停止される揺れの20分の1前後でしかなかった。

それ故原子力規制委員会はそういう見解を出したのだろう。しかし、今回の熊本地震の動きはまるで予測出来ない。震源域も移動している。用心に越した事はない。そういう声も上がるのは当然であろう。そこで問題になるのは

「運転を停止していれば原発は安全なのか?」

と言う問題である。
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※そういう判断も場合によっては必要ではないだろうか?

結論から言ってしまえば答えは「NO」であると言わざるを得ないだろう。

原発を稼働させるには核燃料が必要である。その核燃料、即ち燃料棒は原子炉内に多くの場合3年程存在し続ける。既に川内原発は稼働しているので当然ながら原子炉内に燃料棒が存在しているのは言うまでもない。ところが核分裂と言うのは厄介で一度始まるとそれを止めるのは困難なのである。少なくとも現在人類は「核分裂を即時停止させる技術」は持っていないのである。故に原発の稼働を今停めても既に装着された燃料棒では核分裂は継続し続ける事になる。その際出てくる放射線は直後で数億キュリー、1年保管後では数千万キュリー、10年保管後でも数百万キュリーにも達すると言われる。(1キュリー=370億ベクレル)更に相当の熱を発する。勿論そんな危険な代物をすぐに処理出来る筈もなく、相当の冷却期間が必要なのである。その期間は5年前後なのだそうだ。その為に存在しているのが「使用済み燃料棒貯蔵プール」なのである。その後漸く再処理施設などへ移動出来る様になるが、10年経ったものでも燃料棒は自らが発した熱で溶ける危険があると言うから我々の想像以上に非常に扱いがデリケートなのである。
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※使用済み核燃料の冷却方法
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福島第一原発では2パターンの事故が起きていた。

福島第一原発の事故では1、2号機では原子炉圧力容器内で、4号機では使用済み核燃料棒貯蔵プールで冷却水が不足したものの電源喪失の為にすぐに注水出来ずに過熱、燃料棒崩壊と言う事態になった。(3号機は両方の事態が起きた)しかも4号機は地震発生前に定期点検で、また、1~3号機も地震を受けて停まっていたのである。

…つまり仮に川内原発の稼働を停止してもその後の地震津波などで電源を失えば福島第一原発と同様の事態を引き起こす可能性は常に付きまとうのである。原発事故を心配するのは結構だが、稼働しているかどうかよりも非常用電源の安全確保の対策の方が遥かに心配するべき事ではないのか?どうもポイントがズレている様に思えてならない。少なくとも「ON/OFF」と言う単純な問題ではない事だけは確かなのだ。

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※そういう決断も必要ではある。

被災地では現在避難している方々の安全確保は最優先の課題である。地震活動の鎮静化を受けて復興作業も始まるが、それらの局面において安定した電力供給は不可欠である。熊本地震では山崩れによって水力発電所が潰される被害も発生している。その他の発電所も安全確認の必要性があることを考慮すれば安全が確認され、今動かせる発電所に否応なく頼らざるを得なくなる。九州電力熊本地震で相当の被害を受けている。ここで原発を停めて更に事態を悪化させる意味があるのか?
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熊本地震では発電所も甚大な被害を受けた。

そんな九州電力首相官邸電話をかけて「原発を停めろ」などと主張するのは被災地救援活動の邪魔にしかならない。原発が絶対安全だなんて言えない。原発に否定的であっても良い。だが、ここでそういう話を持ち出すのは民進共産レベルの所業でしかない。被災地への思いやりの気持ちがあるならばここは原発反対でも我慢のしどころではないだろうか?個人的にはそう思う。
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※しかし、使用済み核燃料の保管の余裕は余りない。これも再稼働の前に片付けるべき問題である。