原発より厄介な「もんじゅ」再稼働問題

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※果たして「もんじゅ」はどうなるのか?

高速増殖炉もんじゅ」の存続を政府は決めたと言う。
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http://www.sankei.com/smp/affairs/news/160515/afr1605150002-s1.html

もんじゅ」に関しては原子力規制委員会廃炉も含めた運転主体の見直しを勧告していたのだが、政府の回答としては「存続」となるのだと言う。
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※「もんじゅ」の構造。軽水炉より複雑である。

もんじゅ」は原発に通常使われる軽水炉とは異なり、消費される核燃料よりも新たに生成される核燃料の方が多い、と言う特徴を持つ。また中性子を利用せず、高速中性子をそのまま利用するため減速材が不要である。高速増殖炉」と言うネーミングはこの特徴に由来する。
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MOX燃料の解説。
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※因みに「プルサーマル」はこの様なリサイクル。

また、核燃料もMox燃料と呼ばれるウラン238核分裂を起こさない)とプルトニウム239、そして起動用に核分裂を起こすウラン235を少量混ぜた物が使用される。これらの原料は主に原発の使用済み核燃料が原料になるため、核燃料の有効活用、またプルトニウム半減期2万4千年)の処理が可能な為、放射性廃棄物処理の時間短縮、廃棄した核兵器の処理にも貢献出来る、と言うメリットが考えられる。

また、冷却材に水ではなく金属ナトリウムを用いるので圧力をかけなくても800度以上にならないと沸騰しないので扱いやすい、Na23は中性子を吸収し放射化されNa22(半減期 2.6年)とNa24(半減期 15時間)に変化するが、半減期が短いため炉停止後の被爆量を増加させない比重が水と同程度なので、水と同様にポンプで循環可能、と言うメリットもある。更にもんじゅ」においては3系統ある冷却系のうち、2系統が故障してしまった場合でも1系統のみで炉心の崩壊熱を除去し冷却する事ができる。また循環ポンプなどの電源を全て失う、福島第一原発で起きた様な全電源喪失が起きて循環ポンプが全て停止しても3系統の冷却系にてナトリウムの自然循環と空気冷却器により崩壊熱の除去が可能とされている。しかし、そのナトリウムの管理が難しい事、原子炉自体の設計も軽水炉より複雑になる。またもんじゅ」はナトリウムの性質上(水と反応してしまう)緊急炉心冷却装置が付けられない、更に最悪の全炉心溶融事故を起こした場合、軽水炉と異なり、炉心のプルトニウム燃料が一箇所に集まることで即発臨界が発生する可能性がある、等の危険性も持ち合わせている。メリットは大きいが、リスクも大きいのだ。
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※「もんじゅ」は事故や問題が多い。運営元に問題がある様だ。

しかしもんじゅ」では平成7年にその冷却材であるナトリウム洩れ事故を起こしている。事故レベルは1だったが、現場を撮影したビデオは意図的なカットを施した隠蔽体質が批判を浴びた。22年8月には原子炉容器内に燃料交換機が落下しそれ以来停止したままである。しかももんじゅ」には2012年に保安規定に基づく機器の点検漏れが9679個(!)発覚、更に翌年非常用発電機などの重要機器で13の点検漏れ、虚偽報告が発覚したため流石に原子力規制委員会日本原子力研究開発機構に対し、原子炉等規制法に基づき、再発防止に向けた安全管理体制の再構築ができるまで「もんじゅ」の無期限の運転禁止を命じたのだ。そして昨年11月に日本原子力研究開発機構に「もんじゅ」の運転を任せるのは不適当だとして、日本原子力研究開発機構に代わる運営主体を明示するよう文部科学大臣に勧告したのだ。今回の国の方針はこれを受けてのものである。

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※現状でも年200億円の維持費がかかる。稼働できないなら無駄遣い。

「国が責任を持つ」と言う前提で「もんじゅ」を維持するというのは責任の所在が曖昧なまま原発を再稼働するよりその意味ではマシなのかもしれないが、その結論ありきでまともな運用の出来る運営主体の明示は出来ていないのが現状である。原子力規制委員会文科相の回答を受けた後、代わりの運転主体が示された場合、安全性の観点で信頼に足る組織かどうか検討に入るが、原子力規制委員会の田中俊一委員長は

「看板の掛け替えを許容するつもりはない」

と話し、厳格に審査する方針を示しているがこれは当然である。先述した様に高速増殖炉は「ハイリスク・ハイリターン」なのだから原発再稼働より数段慎重でなければならない。果たしてそんな組織を明示出来るのか?
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※現在のところ「絵に描いた餅」

しかし、日本国内には使い途がなくもて余しているプルトニウムが48トンもある。これを理由に世界に「日本の核兵器開発疑惑」などを持たれては堪ったものではない。そのプルトニウムの一番手っ取り早くかつ平和的な処理方法は「もんじゅ」再稼働と言うジレンマ…どうするべきか?

原子力規制委員会のお眼鏡にかなう組織がなければ「もんじゅ廃炉もあり得るが、そうすると使用済み核燃料の処理は地中深く埋めて数万年単位で保管しなくてはならなくなる。それも当然問題だ。もんじゅ」の問題は原発再稼働以上の難しい問題なのである。
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※「もんじゅ」に対する規制委員会の対応は支持できるだろう。