ゴジラVS自衛隊

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※本当にゴジラ出現なら…逃げるしかないだろう。

現在映画館で大ヒット上映中の「シン・ゴジラ」。ゴジラなる「未知の存在」が日本を襲撃した際の対応をリアリティを持たせて描いた映画だ。

この手の映画では怪獣退治に自衛隊が出動、迎撃する展開はお約束と言っても良いが、「現在の自衛隊の装備と戦術でゴジラに勝てるのか?」と言う疑問ははいつの時代でもあり続けるだろう。実際どうなのか?と言う観点で取材した興味深い記事が出ていた。
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http://diamond.jp/articles/-/99300
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http://diamond.jp/articles/-/99361

…勿論ゴジラは架空の存在だし、防衛上の機密が絡む話でもあるので回答する側も難しい所はあるのだろう。しかしそれでも陸、海、空共に

「ウチが一番強い」

と「個人的見解」ではあるが豪語して、ゴジラ退治は可能」だと言う。その根拠と実効性は記事を御参照頂きたいが、それよりも不肖筆者としては自衛隊がどのレベルまでかは不明だが、「対ゴジラ戦」を想定した対応をシミュレーションしている(らしい)事の方が驚きであった。現実の国防にまで「仮想敵」にされるのだから、この怪獣の影響力も物凄いものがある。杞憂と言うべきか、それとも頼もしい限り、と言うべきか…?

…これまでのゴジラシリーズではゴジラ出現に自衛隊が即座に対応していたりする。まさに「神対応」とでも言うべき対応だが、実際は映画以上に「法の壁」と言うのは分厚いものらしい。

それによればまずゴジラ

(1)どこの国にも組織にも属さない単なる巨大生物
(2)諸外国が軍事行動やテロ目的で放った巨大生物
(3)ISのようなテロ組織がテロを目的として放った巨大生物

のどれかで対応が変わるのだと言う。

(1)の場合、無害通行であれば自衛隊としてはせいぜい航空機を用いて領海外へ誘導する程度なのだと言う。(どうやってやるんだ?) 上陸して建物を破壊する、自衛隊機を攻撃する、と言った行動にでも出ない限り、映画の様に問答無用で「ぶっ放して」爆殺、とはいかないと言うのだ。仮にそれらの行動があったとすれば鳥獣保護法を準用してゴジラを「有害鳥獣」指定するのだと言うが、それでも自衛隊が簡単に出動、とはいかない。

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原発に迫っていても、実際には先制攻撃は難しい。

鳥獣保護法では有害鳥獣駆除にはまず猟友会警察自衛隊と言う手順が必要なのだと言う。ゴジラが猟友会や警察の手に負える代物でないのは誰の目から見ても明白だが、(それでカタが付くなら苦労しない)建前上、そういう事になるらしい。これでは迅速な対応は期待出来そうにない。
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※テロ狙いで怪獣が出現してしまう事もあった。

(2)(3)のケースならば(1)よりは自衛隊の出動は早いが、そんなケースが有り得るのか?と思いきや、意外にも過去のゴジラシリーズではそういう「怪獣の出現」は描かれている。例えばゴジラVSキングギドラ」では23世紀人が23世紀の日本を弱体化させるべくキングギドラを20世紀の日本に故意に出現させた上、操っていたし、ゴジラVSビオランテ」では核物質を食べる「抗核バクテリア」を手に入れるべく「バイオメジャー」なる組織がゴジラの眠る三原山に爆弾を仕掛け、日本政府を脅迫するも入手に失敗、最終的にその爆弾の爆発が原因でゴジラが出現した、なんてのはそういうケースに該当するであろう。ゴジラVSビオランテ」では三原山から東京に向かったゴジラ浦賀水道海上自衛隊が迎撃していた。まさに「神対応」と言うべき素早い対応だが、現実にはそうはいかない。

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※実際には即座に海上護衛艦で囲んでハチノス…とはいかないが…
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※映画では陸海空容赦なく攻撃するのが自衛隊の戦術。

これらの場合における自衛隊の出動は「防衛出動」であるが、これには国会の承認が必要である。「ゴジラVSビオランテ」での浦賀水道での戦闘はゴジラ出現数時間後に行われていた筈だが、その間に一連の手続きが行われたのか?これらの映画の世界では怪獣の出現に際して自衛隊の出動を容易にする立法措置がなされていると考える他ないが、そうでないならば事後承認を前提にした出動か、法を無視した独断行動になってしまう。理由はどうあれ怪獣出現、と言う緊急事態でも簡単に自衛隊が出動出来る訳ではない様だ。

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※水際に陣地を作るのも一筋縄ではいかない。

また、陸地に向かうゴジラを水際で葬り去るべく自衛隊が水際に布陣する事もあるが、これも気軽には出来ないらしい。

自衛隊法では、防衛大臣内閣総理大臣の承認を得た上で、陣地など防御施設を構築できます。とはいえいくら国家火急の事案といえども、自衛隊がいきなり民間の土地家屋を接収して…というわけにはいきません。できるだけ、その民間私有地の持ち主を探し出し賃貸借契約を結び、それから防御施設構築を行うことになります」
(関東地方の陸上自衛隊駐屯地賠償保障専門官)

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※手出し出来ないままこういう事をされては堪らない。

怪獣上陸の瀬戸際にそんな事をしている余裕は何処にもないであろう。シン・ゴジラ」でもそうだったが、現実世界でも「国防」の為の自衛隊なのにその「国防」に制約が多過ぎて既に円滑な「国防」に支障をきたしているのである。勿論ゴジラに「憲法9条の平和主義」など通用する訳がない。と、なると映画の中でも自衛隊の対応を阻害する要因になる制約など却って日本の危機を助長するだけでしかない。それでも「憲法9条の平和主義」に殉じると言うならばそれを止める理由は一切ないので、そうしたい人はそうすれば良いが、不肖筆者としてはそれは御免蒙りたい。少なくとも「映画で起きた事態」を「現実にする」事だけはあってはならないと思うのである。
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※映画では護衛艦はこの様にゴジラにやられるが、実際は耐えられるって?