余命ブログによる弁護士大量懲戒請求の行方
実は事件発生以降、一度は記事に書こう、と思ってはいたのだが、他の案件を優先したり、時間不足等の理由でおざなりにしていたテーマについて今回は触れたい。
「余命ブログ大量弁護士懲戒請求案件」
についてである。
事の経緯を簡単に記すと
「余命三年時事日記」にて朝鮮学校への補助金交付を求める弁護士の言動は「懲戒に値する」として該当する弁護士に大量に懲戒請求を行う事が呼び掛けられ、それは実行された。しかしその「大量の懲戒請求」をされた弁護士が「法的措置」と言う形で反撃に出だした、と言うのが超簡単な経緯である。
反撃に出た弁護士達は虚偽告訴や業務妨害での提訴をチラ付かせる一方で「明確な謝罪と和解金5万(弁護士一人分)で和解」ともしている。そもそも「朝鮮学校への補助金交付を求める」言動が「懲戒請求理由」になるのか?と言う所から考える必要がありそうだが、憲法89条では
※憲法89条。
「法と正義に基づいて行動すべき弁護士が憲法の趣旨に反する言動をするのは怪しからん」
と、言う事に集約されるのだろうが、ある朝鮮学校への公金支出が弁護士の賛成、後押しと言った具体的な言動が決め手になったのが明白な場合はともかく、弁護士にも「思想信条の自由」「言論の自由」「表現の自由」はあるのだから、その兼ね合い、と言うものは非常に難しい問題でもある。例えばある自治体で幾ら弁護士個人で主張しても、また弁護士会の総意としてそれを主張したとしても知事も反対、議会は「反対派が圧倒的多数」であればそういう状況下で「朝鮮学校への補助金交付」の実現可能性などまず期待出来ないが、そういう状況下で賛意を口にしただけで「ただちに犯罪行為」となるかは非常に微妙な所であろう。
だが同時に懲戒請求された弁護士の反撃手段にも疑問が湧く。意図的な大量の懲戒請求、と言うのが虚偽告訴や業務妨害に該当する、と言う主張は理解できなくもないが、いきなり請求を出した個人、それもその殆どが法律の素人、多少知識があったとしても弁護士からすれば素人同然、とも言えるレベルの人それぞれに
「訴訟を受けて立つか5万円払って和解するか」
と言う「殆ど究極の選択」を迫るやり方は「大人気ない」と受け取られても仕方ない。「一罰百戒」の精神で
「次」を封じる狙いがあるのかも知れないが、個人としては兎も角、「弁護士」としてそれをやるのではそういう批判が出るのは免れない。そして、それは「現実のもの」となった。
「懲戒請求に対して行った反撃措置」が「弁護士としての品位を欠く」として更なる懲戒請求の理由になってしまったのだ。これに「法的措置で反撃」などしようものなら「その行為が『弁護士としての品位を欠く』」として更なる懲戒請求、と言う無限ループに陥る事にもなりかねない。そうなったらその弁護士が抱える訴訟は永遠にに増え続ける事となり、本来の弁護士業務どころではなくなる。しかもこれらは自分で訴訟を起こすのだから逃げる事も出来ない。まさか余命ブログはそこまで計算してやったのではあるまいな?
単純計算にはなるが、余命ブログに賛同して懲戒請求を行い、対象の弁護士から訴訟の標的になっている人は960人近くだと言う。訴訟では一人60万円の損害賠償を求める、と言うから仮に裁判で満額認められれば5億7600万円、と言う巨額の賠償金を得られる。全員が和解金5万円を払って和解、としても4800万円。訴訟対象が多いとは言え、金額の妥当性に疑問が湧くのは免れないだろう。そもそも不可解なのは「警告」がなかった事だ。余命ブログ自体が色々あった様だし、その主張に賛否があるのは不肖筆者も承知はしているが、余命ブログの主張に全面的に賛同している人が数多いのは事実である。とは言え、その殆どは法律の専門家とは言えまい。弁護士として自身への懲戒請求が「不当」と言うなら先ずはそれが違法行為に該当する旨の警告文を送付して済む話ではなかったのだろうか?それでも切手代で78720円かかるが、それが惜しいなら会見で警告するとかして請求の意思の撤回を促す事は出来た筈だ。
そういう手順を踏まないでいきなり金銭の絡む選択肢しか突き付けない、と言うのは
「大量請求を逆手に取った『ゼニカネ目的』」
と邪推されても仕方ない。もう少し冷静な判断が必要だった事は間違いないだろう。1発目は兎も角、2発目は根拠と理由がある、と言えるだろう。さて、この一件、どうなるか?