映画から見える韓国の歴史認識

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韓国で大ヒットしている映画「鳴梁」。
筆者は見ていないが(と、言うか見る気にならない、が正確な表現か)、韓国では既に1700万人以上が見たと言う。人口の三分の一が見た計算だ。ついでに言うと朴槿恵も見たと言う。確かにその意味では空前の大ヒットと言っても差し支えなかろう。

だが、作中に登場する?樮楔(ペ・ソル)と言う武将の子孫が「作中の?樮楔の振る舞いは歴史の捏造で死者の名誉毀損にあたる(韓国では死者に対する名誉毀損も成立する。)」と、主張して同映画の監督及び製作会社を告訴する騒ぎになっている。

http://netallica.yahoo.co.jp/news/20140915-02003632-kstyle

《筆者注:見ていない映画に言及するのもどうかとは自分でも思うが、本記事は同映画の批評より、同映画に関する記事から読み取れる韓国の歪んだ歴史認識がテーマである。ご了承頂きたい。》

映画の主人公は李舜臣。即ち豊臣秀吉朝鮮出兵が背景である。クライマックスは李舜臣が日本水軍を撃破した(事になってる)「鳴梁海戦」だそうだ。詳細は後述するが、登場人物の描写を「歴史の捏造」と非難するなら、このクライマックスこそが壮大な歴史の捏造そのものである。

…と、言ってしまうと元も子もないが、これで片付けてしまうと面白味がないので背景や歴史的事実を述べておきたい。

先ず、歴史をテーマにした映画や小説で実在の人物像に作者の主観を反映したりしてアレンジを加えるのは決して珍しい事ではない。例えば作家の隆慶一郎氏はなぜか徳川秀忠が大嫌いだったと言う。そのためか氏の作品「影武者徳川家康」では秀忠は悪役として登場する。

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※漫画で別人格にされた人1

また、漫画「花の慶次」での前田利家は随分酷い描写だ。作品序盤の末森城の戦いで利家は漫画では最後まで出陣を躊躇い、妻おまつに尻を叩かれて漸く出陣するが、実際には利家は末森城の危機を知るや単騎で真っ先に出陣している。後々まで利家自身がこれを自慢話にした程だ。

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※漫画で別人格にされた人2

そうなる理由は先述した様に作家の主観や演出の都合などが挙げられるが、フィクションと割り切って見るならそういきり立つ事ではあるまい。

さて、本題の?樮楔だが、李舜臣と確執があったのは彼の日記から読み取れる。

(1597年)8月17日に軍営(康津)に到着すると、誰もいなかった。慶尚水師の?樮楔は私が乗る船を送らなかった/18日、会寧浦に行った。?樮楔は船酔いを口実に出てこなかった/19日に将帥らに教書に粛拝させたが、 ?樮楔はしなかった/25日、唐布の漁夫が避難民の牛を盗みながら外敵が来たと嘘をつき、驚かせた。(嘘ということを知って)軍士らは安心したが、 ?樮楔はすでに逃げた/27日、 ?樮楔が来たが、おびえていた。私はそっと「水師はどこかに行ってしまったのではなかったのか」と話した/30日、 ?樮楔は敵が押し寄せるのを心配して逃げようとした。このため彼の部下の将帥らを呼んで率いた。 ?樮楔が奴婢を通じて「病気がひどく健康管理をしたい」と求めた。陸地で健康管理をするよう公文書を送った。 ?樮楔は右水営を離れて陸地に上がった/9月2日、?樮楔が逃げた。

これが映画では?樮楔が暗殺の動きに亀甲船を燃やす“悪党”として描写されたとなっている様だ。?樮楔の子孫が反発した理由がこれらしい。

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※漫画でも別人格に出来ない国賊

韓国では子孫が出世すれば先祖を筆で育てる」という言葉がある。韓国では先祖の地位が子孫の現在の地位と無関係でない。朝鮮が開国して「龍飛御天歌(朝鮮の建国を称える歌)」を書いたように、各家門ごとに先祖の績を称えて崇拝する「門中史学」がある。このような門中の人物はなぜか一様に欠陥がなく、歴史的な過ちは政敵の謀略など他者のためとすることも多い。それが小説・映画のような虚構の創作物だけでなく、歴史学者の人物解釈も門中の気分を害すれば問題に巻き込まれやすいと言う。今回はまさにその典型例だ。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140910-00000007-cnippou-kr&pos=1

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140910-00000008-cnippou-kr

この発想こそが韓国のファンタジー歴史擬の本質なのだろう。つまり「大局的な歴史よりも特定の個を中心にした歴史が優先」するのである。?樮楔にしても彼が李舜臣と確執があり、その李舜臣の記録を前提にするなら李の足を引っ張り敵前逃亡した事になる。映画はそれを踏まえてアレンジしたのだろうが、?樮楔の子孫からすればあくまで中心は?樮楔で彼に瑕疵はない。李舜臣を日本、?樮楔を韓国に置き換えてみればあたかも日韓の所謂歴史認識問題と構図は変わらない。立場によって歴史認識が違うのが当たり前だが、そういう大局的な観点で歴史に向き合う事が出来ない韓国に問題があるのは当然の話である。

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また、映画のクライマックスの「鳴梁海戦」あたかも李舜臣は12隻の軍船で日本水軍多数を撃破して大勝したかの如く描かれるが、実際には当の李舜臣の日記でさえ “賊船三十隻撞破”とあるだけであり、撃沈確認の記述もなく、また艦船に対し大損害を与えた旨の記述もなく、対戦した敵船の大きさも、(当然ながら)敵軍である日本側の戦死者数も記録されてはいない。各史料を総合すると 「朝鮮水軍は12~14隻で、日本側水軍の先鋒の中型船30隻を攻撃したのち戦場離脱、当該海域の制海権を放棄し、その日の内に追撃の恐れのない遠方まで撤退」となり、 戦後に李舜臣が北方に退却したために、日本側の水軍は西岸に進出して戦略目的を達成している。つまり制海権の放棄と艦隊の離脱逃走、日本軍を阻止できていないという史実は無視されているのが韓国の一般的認識であり、映画はそれに更に輪をかけた事になる。壮大な歴史の捏造と述べた所以だ。

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※あっ、本音が…

こういう連中が「歴史がどうこう」言うのである。圧巻のブラックジョークである。

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※韓国と違ってまとめな日本人にはいない