憲法22条VS旅券法19条

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※「ゴジラ(1954年)」より。国家機関が国民の命を守るのはその責務の一つである。

危険情報で4段階で最も高い「退避勧告を発出しているシリアへの渡航を計画していた50代の男性に対し旅券の返納を命じ、これを受領した。この男性は新潟市在住のフリーカメラマン、杉本祐一氏(58)で、シリアへ渡航をメディアなどを通じて表明していた。

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※杉本祐一氏

外務省は警察庁とともに再三にわたり渡航の自粛を強く求めてきたが、翻意しなかったことから旅券法に基づいて旅券を返納させ、渡航を差し止める措置に踏み切ったという。旅券の名義人の生命、身体、財産の保護という旅券法19条の規定に基づき、緊急に旅券の返納を命じたとしている。この規定による返納は初めてのケースだそうだ。

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※返納命令文書及び旅券法19条の規定。

外務省幹部は6日、イスラムスンニ派過激組織「ISIL」の支配地域をめざす渡航について「旅券の返納を要請し、出国を差し止める手段も必要になろう」と述べていた。

http://www.sankei.com/smp/politics/news/150207/plt1502070025-s.html

これに対し杉本氏始めジャーナリストなどからは批判する意見があがっている。憲法22条の「海外渡航の自由」を制限するものである、という主旨である。

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※シリアに対する外務省の「退避勧告」。全土がその対象だ。丸腰で行くのは自殺行為に等しい。


だが冷静に考えれば自明の事だが、シリアという国は現在ISILが暗躍しており、治安がないに等しい状態である。外務省だって伊達や酔狂で「退避勧告」など出すまい。幾ら自由だ権利だと言ったところでそれはあくまで生きていればの話であって仮にISILに人質にされた挙げ句殺されてしまうのでは何にもならないのではないか?…危険を承知でその場所の真実を伝えようと言うジャーナリズム精神は素晴らしいかも知れないが、その結果世界に伝えられた唯一の情報が自身の監禁・殺害情報では文字通りの「無駄死に」になってしまう…ISILの様なテロリスト集団が幾ら丸腰の民間人とは言え取材や報道の自由と身の安全を担保してくれる保証が一体何処にあると言うのか?

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※「報道の自由」だけを振りかざす無責任な報道の例。

また「自由」と「責任」は表裏一体である。何処の新聞社とは言わないが、朝日新聞の様に所謂慰安婦問題で嘘出鱈目を垂れ流した挙げ句何の責任も取らないのはジャーナリズム云々以前に自由や権利を主張する資格などない。今現在シリアに行ってISILだろうが何だろうが自身に降りかかった火の粉を自分で何とか出来るならともかく万が一ISILの人質にされれば現状では日本政府レベルどころか他国政府まで巻き込んだ対応を余儀なくされるのがオチであろう。こうなっては自己責任もへったくれもない。「海外渡航の自由」「取材報道の自由」より明らかに人命安全の方が優先なのは論を待つまでもなかろう。岸田外務大臣が杉本氏の旅券返還命令を出したのもやむを得なかったと言えるだろう。

この杉本祐一氏、そもそも自らの行動計画をメディアなどで公言していた点が腑に落ちない。日付まで御丁寧に公表していたのだから不思議である。これではISILの連中からすれば文字通りの「鴨がネギ背負ってやって来る」様なものである。最悪空港を出た瞬間拉致人質…なんて事も十分有り得るだろう。相手はテロリストなのだから。

一部ではこれを「売名目的」だったのではないか?等と噂する声もあるが、旅券返還命令を拒否すれば逮捕まであると言う。どちらにしても本人にとってはリスクが高いだろう。「過ぎたるはなお及ばざるが如し」である。

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※こういう冷ややかな見方も多い。

重要なのは「自由」と「責任」が表裏一体であると言う事と、「権利」とは無制限に主張・行使出来るものではない、と言う認識である。基本的な事だと思うがこれを理解しない人間はどういう訳か左寄りの思考回路を持っている人間が多い。不思議なものである。

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※自分で全部何とか出来るなら苦労はないがそういう人間は余りいないものだ。