安全保障関連法案は憲法違反なのか?

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※高村副総裁VS枝野幸男

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※各党の主張一覧。

安全保障関連法案の合憲性を巡って激論が交わされたようだ。

衆院憲法審査会は11日午前、自民党高村正彦副総裁や民主党枝野幸男幹事長、公明党北側一雄副代表らが集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案の合憲性をめぐって自由討議を実施した。高村氏が「憲法違反との批判は全く当たらない」と強調したのに対し、枝野氏は憲法学者の「憲法違反」との指摘を踏まえ、「立憲主義に反する」と訴え、真っ向から対立した。

 自由討議は、4日の参考人質疑で自民党推薦を含む憲法学者の3人全員が、関連法案について「憲法違反」との認識を示したことを受け、法案が憲法に適合しているか、与野党が持論を展開させた。

 高村氏は「最高裁判決で示された法理に従い、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために、自衛のための必要な措置が何であるかを考え抜く責務がある」と強調。その上で「これを行うのは、憲法学者でなくわれわれ政治家だ」と述べた。

 枝野氏は、3人の憲法学者が「違憲」と断じたことについて「自民党は重く受け止めるべきだ」と迫った。さらに「専門家の指摘を無視して、一方的に都合よく否定する姿勢は法の支配とは対局そのものだ」と批判した。

 北側氏は、政府が昨年7月に閣議決定した武力行使の新3要件について「従来の政府見解の基本的な論理を維持し、現在の安全保障環境に当てはめて導き出された」と述べ、憲法に適合しているとの考えを強調した。》

http://www.sankei.com/politics/news/150611/plt1506110019-n1.html

参考人として招致した憲法学者が悉く安全保障関連法案を「憲法違反」と断じた為、法案が違憲なのか合憲なのか国会でも議論されているが、議論の核心は違憲でなければOK」なのか「合憲でない限りNG」なのか、と言う点に集約されるのではないだろうか?つまり与野党のそもそもの土俵が違うので簡単に議論が噛み合うとは思えないが…

ここで言う最高裁判決」とは59年の砂川判決を言う。

「わが国が、その存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のこと」

日米安全保障条約のように高度な政治性をもつ条約については、一見してきわめて明白に違憲無効と認められない限り、その内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできない」

と判示した判決である。要点は

「日本には憲法9条の規定に関わらず自衛権は存在し、その行使が可能である」

と言う事、更に

「高度な政治性を持つ条約は極めて明白に違憲無効でない限り法的判断を下すことは出来ない」

と言う点だ。

与党は判決の言う「その存立を全うするために必要な自衛のための措置」には集団的自衛権も含まれる、と解釈する。次世代を除く野党はその反対の解釈だ。しかし、である。国際法上では51年のサンフランシスコ平和条約、56年の国連加盟における国連憲章の受諾、何れも集団的自衛権に言及がある。判決がその後である事を考慮すれば集団的自衛権を含む、と言う解釈は成り立つと言えるだろう。

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違憲判断をするのは最高裁判所。学者の仕事ではない。

更に国連憲章サンフランシスコ平和条約と言った国際条約は砂川判決が言う「高度な政治性を持つ条約」に該当すると考えても差し支えあるまい。と、なればそれらに集団的自衛権の保持・行使に言及があってもそれが直ちに憲法違反になる、とまでは言えないであろう。また憲法の規定では裁判所が「違憲」と判決しない限り違憲とは言えない。従って集団的自衛権行使が憲法違反にならない、と言うロジックになるのだろう。…それが例え限り無く黒に近いグレーであっても…

憲法9条の条文及びその解釈のみから安全保障関連法案の合憲性を見出だすのは難しいかもしれないが、安全保障関連法案の合憲違憲の判断を憲法9条だけに頼るのは危険である。先に挙げたような国際法等も含めて総合的な判断が必要なのであろう。

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憲法98条。国際法を守ることが明記されている。

…とは言え国際法憲法のどちらが優先されるべきなのか?という点に疑問を持つ読者様もいるであろう。結論から言ってしまえば憲法国際法>国内法という順序である、と言うのが学界での通説である。と、なると憲法の規定に反する国際法は無効にしていいのか?という疑問も出てくるであろう。しかしこの辺はハッキリしていて「条約法に関するウィーン条約」では

「条約の不履行の理由をその国の国内法を根拠にしてはならない」

「条約が仮にその国の憲法違反であったとしてもその違反の事実がどの国から見ても明白なものでない限り憲法違反を理由に無効を主張出来ない」

と規定されている。

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Wikipediaによるウィーン条約の解説。日本は81年加入。

更に政府解釈では国の存立に関わる内容の条約は憲法より上位になると言う解釈だそうだが、そうであるならサンフランシスコ平和条約はそれに該当するとは言えまいか?サンフランシスコ平和条約にはこういう条文もあるのだが…

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サンフランシスコ平和条約5条。集団的自衛権の保持及び集団的安全保障体制の締結は認められている。

…それらを総合して考えるならば安全保障関連法案は違憲ゆえ無効とは直ちには言えないのではあるまいか。

また憲法前文には「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、…」とある。憲法9条を理由に一国平和主義という偽善を唱える前に先ずこの部分について深く考察するべきではないのか?やはり左翼連中の思想が浅い、と言う事だ。