手足のあるヘビの発見

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※「進化論」を提唱したダーウィン

ダーウィンが「種の起源」で進化論を提唱した際、反論として「『生物が進化する』と言うならばある生物から別の生物に進化する途中の生物がいる筈だがそれがいないのは何故なのか?」と言う意見が出たと言う。しかしその僅か2年後にドイツで「アーケオプテリクス」(始祖鳥)が発見され、進化論が一気に脚光を浴びたと言う。ミッシング・リンク(失われた鎖の輪)」と呼ばれる化石生物はその後も見つかっているが、今度はヘビ、である。
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※アーケオプテリクスの最も有名な化石。本物はベルリンにあるが一度だけ日本で公開された。
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※最近発見されたアーケオプテリクスの化石。手足の形状がよく判る。これで足の指に大きな鉤爪があるのが判明したという。
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※アーケオプテリクスの推定復元図。実は後ろ足にも翼があった。

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※テトラボドフィスの化石。見た目は明らかにヘビだが、足があるのが鮮明に判る。

《4本の脚を持つヘビの化石を英ポーツマス大学などのチームが発見した。ヘビはトカゲから進化したと考えられているが、どのように脚を失っていったのかを考える上で貴重という。

「テトラポドフィス」(Tetrapodophis amplectus)と名付けられたこの生物の化石は、ブラジルの1億1000万年前(白亜紀)の地層から見つかった。全長は20センチほどだが、若い個体だったとみられ、成体はさらに大きい可能性があるという。

化石は極めて状態が良く、4本の短い脚がはっきりと分かるという。前脚は長さ1センチほどだが、ひじや手首、手が確認できる。現生のヘビとは異なる姿だが、尾を持たない長い身体やうろこ、長い頭骨、牙状の歯などヘビの特徴を持つことから、研究チームはこの生物がトカゲではなくヘビに属すると判断した。

脚の短さから、移動に使っていたとは考えられず、獲物や交尾相手をつかまえるために使われていた可能性もあるという。

テトラポドフィスは乾燥した低木地帯にある塩湖に暮らしていたようだ。体内からトカゲの骨が見つかっており、は虫類や両生類をえさにしていたらしい。

同大のデイブ・マーティル氏は「ヘビは遠い過去にトカゲから進化したと考えられているが、進化の要因や、もとになったトカゲの種類は不明だった」と、新たな化石がヘビの進化の過程を明らかにするのに大きく貢献すると期待している。

 成果は米科学誌「Science」(7月24日付)に発表された。》
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※テトラボドフィスの推定復元図。僅かに残る手足で獲物を押さえつけたと推定されている。それに基づいたイラストだが、実際にこの様に手足を使ったかは不明である。しかし移動の際には殆ど役に立たなかったであろうと考えられている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150724-00000088-zdn_n-sci

…筆者如きが言及するまでもなく、現在確認されているヘビには手足がない。…正確に言うと骨格には痕跡器官として僅かに足の骨がある。人間で言う「尾てい骨」の様な物だ。勿論最初からヘビに手足が無かった訳ではなく、当然ながら祖先となる何らかの爬虫類が存在し、そこから進化の過程で手足が不要になり、現在の姿になったとされている。

ヘビは爬虫類の中では新顔であり、現在の姿になったのは新生代、恐竜絶滅後とされていた。ではどの爬虫類から分岐したのか?という疑問が当然出てくるが、それはどうやらトカゲらしい。そこまでは現在の研究でもほぼ間違いないと考えられていた様だが、今回の発見でそのルーツが解明されたり、そのきっかけになるかもしれない。形状を見れば一目瞭然で、ミッシング・リンク」そのものであると言って良い貴重な発見である。

またテトラボドフィスの発見はもう一つ重要なヒントを我々に教えてくれている。トカゲからヘビに進化したとして、その過程で「ヘビの様な胴体を獲得したから手足が不要になった」のか「手足が不要になったからヘビの様に胴体が伸びた」のか考えが二つあり得る。テトラボドフィスの発見は少なくとも前者の進化の過程を示唆しているとも言えるだろう。先に胴体が伸びた理由は不明だが、身を隠して狩りをするのに都合が良かったからとか、低木の枝に擬態する為だったとか、幾つか考えられる。また発見された地層が白亜紀である事、手足の退化の具合などからトカゲからヘビが分岐したのは少なくともジュラ紀後期あたりではないかとも思える。この頃、即ちジュラ紀から白亜紀に移る際に幾つかの恐竜の種の絶滅、食物連鎖の変化などもあった。そういった外的要因がヘビへの進化を促した可能性も考えられるのではないだろうか?

ミッシング・リンク」そのものと言える化石の発見は貴重かつ重要である。今後の研究成果に大いに期待したい。