サーベルタイガーではありません、象なんです。
マレーシアで、実に珍しい象が発見された。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160812-00000046-jij_afp-int
※牙の付き方が逆向き…
※正面から。どうしてこうなったのか?
通常象の牙は上向きに付く筈だが、この写真の象はどういう訳か牙が逆向きになってしまっている。
「非常に珍しい」
「牙がこうなった理由はわからないが、先天的な異常かもしれないし、近親交配のせいかもしれない」
とはマレーシア・サバ州野生生物局のセン・ナサン氏のコメントだが、まるでかつて地球上に生存していた「サーベルタイガー」を彷彿とさせる牙の付き方であると言えそうだ。
※サーベルタイガー推定復元図。ペットには出来そうにない。
…しかしこれではどう考えても「象として」の牙の使い方は出来そうにない様に思える。この象は死体ではなく生きて保護されたのだが、それまで牙を使わずに生きてきたのだろうか?それともこの状態でも本人なりの使い方を編み出して有効活用していたのだろうか?暫くは象保護区で保護して、この象が住むのに適した場所があれば追跡装置を装着した上でそこに放す計画だそうだ。調査の結果次第ではこの象の牙の使い方について何か判る事があるかもしれない。
ところが象の牙が全て「上向き」だったのか?と言われると実はそうでもなく、下向きの牙を持っていた象もいたのは化石記録から明らかである。
※デイノテリウム推定復元図。
※デイノテリウム復元骨格
一説によれば100万年前まで生存していた、と言われる絶滅種の「デイノテリウム」と言う古代の象は牙が何故か下向きに付いていたのだ。理由はまだよく判っていない。ただ、現在の象は上向きの牙を利用して木を倒し、枝を曲げて木の葉を食べるが、下向きの牙でそれは難しいだろう。逆に地中を掘った可能性も考えられなくもないが木を倒す為なら効率が悪いし、地中にある餌を得るためだとしてもその食糧で最大で肩高4m、体長5m、体重15tとも言われる巨体を維持できるだろうか?と言う疑問も出てくる。結局真相は不明、としか言い様がない。絶滅した原因もよく判っていないが、少なくとも当時の人間に乱獲されて絶滅したのではない事は間違いなさそうだ。100万年前の人類のテクノロジーではどうやらこの象を「狩る」事は出来そうにはないからだ。
…いずれにしてもこの象が何故他とは違う「下向きの牙」になってしまったのか?その解明には遺伝子レベルでの調査も欠かせないだろう。「下向きの牙」の使い方も追跡調査で判明する可能性もあるが、この象にとってはそんな「人間の興味」は関係ないだろう。寧ろその牙が本人にとって「災いの種」にならない事を願うばかりである。