クマムシの「タフさ」の秘密

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※コレが「タフさ」でその名を知られるクマムシ

クマムシ」と言えば「不死身の生物」と認識している方も多くいらっしゃるだろう。

何せ「150度以上の高温」「絶対零度に近い超低温」「真空から75000気圧までの大幅な気圧帯」にも耐え、それどころか「人間なら即死する放射線地域」に放り込まれても耐えてしまう。(注:人間のX線の致死量は500レントゲンだが、クマムシの半致死量は57万レントゲン)

更に「生身で宇宙空間に放り出されても10日は生きていられた」と、言う実験結果もあるそうなのでまさに「不死身の生命体」に限りなく近い存在だが、実はこの恐るべきクマムシのタフさは

「乾眠」

と呼ばれる状態の時にのみ、発動されるのだそうだ。

その「乾眠」状態では通常体重の85%を占める水分を僅か3%にまで落として代謝すら停止させる。水分を得ることで元に戻るそうだが、「生き返る」のではなく、「死んでいる様に見える」だけクマムシ「乾眠」状態でも一応生きてはいるそうだ。

「乾眠」に入る際にはゆっくりと水分を減らす必要があり、急激に水分が失われる状況下では流石のクマムシもそれには耐えられず、死んでしまうのだと言う。

そんなクマムシの「タフさ」の秘密が解明されたのだと言う。
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http://www.sankei.com/wired/news/170328/wir1703280001-n1.html

従来はトレハロースという糖を体内で生成する事でそのタフさが発現される、と言う説があったが、クマムシが作るトレハロースは体重の2%に過ぎず、疑問の余地があった。だが、クマムシ

「乾眠状態にあるときに発現する天然変性タンパク質をつくりだす遺伝子」

がそのタフさの源だった、と言うのだ。その遺伝子の発現を減らすと、クマムシなどの緩歩動物はもはや乾燥状態で十分に生きながらえない、と言う実験結果も得られ、クマムシの「タフさ」の秘密は解き明かされた様だ。

クマムシの「乾眠」の際に発現する天然変性タンパク質の性質を解明し、人工生成が可能になり、その技術が実用化されれば例えば現状輸送の際には莫大なコストをかけて冷凍処理を施す必要があるワクチンもこの天然変性タンパク質で「乾眠化」出来るなら常温で気軽に輸送出来る様になる、と言う事も考えられる。

その天然変性タンパク質で任意の野菜や果物を「乾眠」させられるなら「人体への影響」をクリアすれば鮮度を超長期間保てる事にもなる。そうなれば農業から物流、小売に至るまでの大革命になる…なんて未来もあるかもしれない。

「一寸の虫にも五分の魂」と言うが、それどころではない。「生命の神秘」とは「人間の技術」でも及ばない所にあるのかもしれない。