翁長雄志は「最大のカード」を切らされたのか?

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※最大最後のカード、切ったのか?切らされたのか?


「承認撤回」

を表明した。基地移設阻止を実現する為の「最大最後のカード」とも言える手段だが、翁長雄志は「カードを切った」のか?それとも「切らされる」所まで追い詰められたのか?



翁長雄志は以前、「承認取り消し」を表明し、その後の裁判で敗訴している。そして今度は「撤回」。違いが判りにくい部分もあるが「取り消し」は「承認時点での瑕疵」を理由に行うもので「承認時点に遡って」効力を失わせる。一方「撤回」は「承認後に生じた理由」で行われ、撤回された時点から効力を失わせる、と言う違いがある。どちらにせよ、成立すれば「工事が出来なくなる」事に変わりはないが、行政の仕組みとはかくもややこしいものなのである。

「取り消し」を巡る法廷闘争に沖縄県が敗れたのは16年12月。敗訴確定直後から翁長雄志を支持する基地移設反対派は「撤回」の実行を要求してきた。それに対して翁長雄志「必ずやる」と約束しつつ、タイミングは慎重に探ると説明していたが、この間、1年半もの時間を要した。当然工事はその間進められ、6月中旬、政府が土砂投入の8月17日開始を県に通告すると、苛立った反対派が知事室前に連日押しかけ、座り込み等の圧力で決断を迫る様にもなっていた。

判断に時間を要したのはそれなりに理由もある。先述した様に「撤回」は「承認後に生じた理由」で行うものなので、「理由」となる事象が多い方が有利になる、とも言える。だが一方で「悪質な職権濫用」と判断されれば、政府から「翁長雄志個人」への「損害賠償請求」も可能になってしまう。そうなった場合、翁長雄志にとんでもない額の賠償請求がされる事も十分に考えられ、その額はまず間違いなく翁長雄志の全財産を上回るであろう。判断が慎重になるのも無理はない。


「撤回」を受けて政府がそのままそれを受け入れる筈もなく、間違いなく法的措置に出る事になる。手段としては「撤回」の効力を差し止める「執行停止」の申し立て、そして「行政代執行」訴訟となる。

「代執行訴訟」で沖縄県が勝訴出来れば工事を差し止める事は出来るが、敗訴した場合、合法的に工事を差し止める手段はほぼ尽きてしまう。まさに「諸刃の剣」「最大最後のカード」だが、やはり「切らされた」感が強い。

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「代執行訴訟」が3~4ヶ月かかるとするなら判決は10月末から11月末にかけての時期に予想される。その間の11月18日には沖縄県知事選挙が行われるのだ。政府としては

「大したことはない。台風が来て工事を少し中断せざるを得なくなるようなものだ」

「工事再開まで長くはかからない。全部シミュレーションしている」

と、余裕を見せていると言う。翁長雄志の「承認撤回」は想定内だと言う事だ。勿論裁判で勝てる自信もあるのだろう。翁長サイドとしては選挙前に敗訴してしまうと知事選で基地移設の是非を争点に出来なくなる。かと言ってこれ以上判断を先送りするのでは支持者からの反発は避けられない。翁長雄志は知事選への出馬についてまだ態度を明確にしてはないが、本人が出馬するにしろ、誰か後継者を出馬させるにしろ、反発を受けて選挙で負ければ外野からは

「基地移設容認が民意」

と見なされ、実施を狙う県民投票の大義名分がなくなる。それだけは避けなくてはならないだろう。そういう意味では「カードを切らされた」と言えるのではないだろうか?
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※そんな精神は基地移設反対派にはない。

…それでもこのタイミング、政府が土砂投入を通告した期日の直前、と言う事になるが、判決が知事選と被る可能性が高い。沖縄県が勝訴出来るならそれに越した事はないが、敗訴の場合、投票直前なら反対派に甚大なダメージとなる可能性は極めて高い。選挙結果に影響を与えかねないだけに判決を知事選後に出す事は十分に有り得るが、翁長サイドが知事選に勝ったものの、裁判で敗訴確定、となれば翁長サイドがほぼ確実に基地移設阻止を争点化し、公約にする以上、公約は事実上の「空手形」となり、「地獄の知事生活」となってしまう。そこまでのリスキーな知事を望む人はどれだけ居るのだろうか?

そう考えるとこの問題、政府は工事を継続して反対派に「諦めムードを醸成させる」なんて言うが、既に大勢はそれ以前に決しているのであろう。現実を認識し、これまでの姿勢を改める「最後の機会」とも言える。沖縄県民の「良識ある民意」が示され、それを汲んだ対応を県が行う事を願ってやまない。
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※既に「実」は入らないだろう。