ダイヤモンド・プリンセス対応を批判する愚

※これだけ日本人乗客が多ければ入港拒否など出来まい。
 
支那発の新型コロナウイルス集団感染が発生し、検疫の為に横浜港に停泊したままの客船「ダイヤモンド・プリンセス」号。この船への日本政府の対応について、内外から批判の声が出ていたが、乗客の下船が始まり、乗客は自国政府の用意したチャーター機などで帰国する段階となった模様だ。
 
だが、そうなると今度は自国民を回収した各国にこの「武漢肺炎」対策が求められる事になるが、それは今まで散々日本政府の対応を批判してきた事が「そのまま跳ね返る」事になる。果たして各国は適切な対応を取れるのだろうか?
 
 
余り知られていない模様だが、この「ダイヤモンド・プリンセス」号は英国船籍で、船長はイタリア人だと言う。従って幾ら船が日本の領内にあると言っても船内に日本の法律を適用する事は基本的には出来ない。日本はこの船に医師を派遣するとか、医薬品を提供する等の対応をしたが、それらは「国際法上の義務」でもない。あくまで「人道的配慮」によるものである。
 
「ダイヤモンド・プリンセス」号は120日に横浜を出港し、香港、ベトナム、台湾などを回って2月3日に再び横浜港に戻ってきたが、1月25日に香港で下船した乗客が感染していたらしく、それが明らかになったのは2月1日だった。その間、船内でパーティーをするなどしていたのだから、それが集団感染に繋がった事はまず間違いないだろう。そしてその間、公海を航海していたのは明白なのだが、それが責任の所在を曖昧にしている。
 
基本的には公海上の船舶の保護や安全確保はその船が持つ船籍の国(旗国)の責任だと言う。で、あれば「ダイヤモンド・プリンセス」号の船籍は英国なのだから英国が責任を持つべきだと言えそうだが、英国は積極的な動きを見せている気配はない。だが、今回の様なケースはそもそも「想定されていなかった」模様で、関係国の責任の分担や範囲等の取り決めは「存在していない」模様なのだ。これが問題を更にややこしくしていると言える。
 
この船の乗客に日本人が多かったからと言って日本に「入港を受け入れる」義務が発生する訳ではないし、必要な援助を行う義務がある訳でもない。それを他国にとやかく言われる筋合いなど「最初からない」のだ。あくまで日本が行ったのは「人道的措置」であり、船内の隔離対策については船籍のある英国の責任で行うべき、と言う考えだって有り得る。船内に日本の法律適用出来ないのだから。
 
この様な「先例のない状況」で対策が全て上手くいくとは限らない。しかも相手は「目には見えない」ウイルスであり、そのウイルスの日本上陸防がなくてはならない、と言う命題も存在するのだから、対策は必然的に「手探り状態」となるのは避けられない。批判するのは勝手だが、それは「当事者でない外野」だからこそ出来るのであって、実際自分達が当事者となればその批判は当然自分達に跳ね返る事になる。最悪「ブーメラン」となる訳だが、今まで批判していた海外メディアはその事を自覚しているのだろうか?
 
アメリカは16日にチャーター機で米国人乗客帰国させたが、そのうち14人がウイルス検査で陽性だった。また、カナダのCBC放送は「選択肢は限られていた分、日本政府はもっと迅速に行動しなければならなかった」と報じたが、この船には200人以上のカナダ人乗客がいた。勿論大半がチャーター機で帰国後は「2週間の隔離」となるが、カナダ政府は「迅速な対応」出来るのだろうか?
 
英紙サンは18日、ダイヤモンド・プリンセスを「疫病船」と見出しに掲げ
 
「隔離計画にしくじって、支那本土以外で最大の感染拡大を引き起こした」
 
等と報じたが、そもそもこの船はその英国船籍である。批判する前に自国の船をどうするのか考えてみてはどうか?
 
また、専門家からは
 
「船の中でどんどん感染した。船内で隔離が甘かったからだ」
 
などと言う声が出ている様だが、乗船していた客にウイルス保持者がいた事が判明したのは当人が下船してから1週間が経過していた。その間、船内では「ウイルスが存在している」など夢にも思わず「通常通り」にパーティーやら行っていたのだから、「人から人へ」と次々に感染していたであろう事は容易に想像出来る。そして感染者が船内に居た事が判明してから横浜港に来るまで2日かかっている。要するに横浜港に入港し、日本が検疫を始めた段階で「既に手遅れ」だった可能性は「極めて高い」のである。その間、船内の秩序管理は「旗国(英国)」か、船長(イタリア人)、運行会社(アメリカ)のいずれかに責任が存在する事になる。メディアが真に批判するべきなのはそれらであって「日本ではない」のである。