外交問題を引き起こしたゴーン逃亡劇

※逃亡は容疑を認めたに等しい。
 
年末年始の日本に衝撃を与えたカルロス・ゴーンの国外逃亡劇。これに関与した疑いで既にトルコで逮捕者が出ていると言う。
 
そもそもゴーンがどの様にして監視の目を盗んで日本から出国できたのかは現時点では明らかにされていない。楽器箱に隠れていたとか言われているが、そこは大きな問題ではなかろう。ゴーンの日本脱出計画全貌がどうであれ、保釈条件に明白に違反している事に変わりはないし、更にゴーンの所持するパスポートが何通あろうが、合法的にそれを使って日本から出国する術がない以上、手段がどうであれ、それは「違法行為」であり、「犯罪行為」である事に変わりはない。勿論当初の逮捕・起訴容疑である金融商品取引法違反に関しての「シロクロ」など無関係の話である。
 
経緯に関する疑問はさておき、結果的に本当に「ゴーンが既にレバノンにいる」のであればその脱出計画はゴーン一人で実行は困難である、と考えるのが自然であろう。それなりの協力者が日本にもいた、と言う事でもある。当然そういう人物がいるのであればその行為は立件するには「十分すぎる理由」となるが、ここに来て「レバノン政府の関与」が指摘されている。本当であれば大問題だ。
 
 
※報道を前提にすれば相当疑わしい。
 
勿論レバノン政府の公式声明ではゴーンの日本脱出計画関与は否定している。当然と言えば当然で、ゴーンの日本脱出が「違法行為」である以上、「それに加担した」なんて例えそれが事実でも公式声明で広言出来る筈がない。それを認めればその瞬間、レバノンは「国家として犯罪行為の助長を行った」と言う「犯罪国家」となる。ゴーンはレバノンの国籍も持っている様だが、「自国民保護」と言う大義名分はここでは通用しない。ゴーンの容疑の「シロクロ」に関わらず、ゴーンは日本においては「犯罪被疑者」であり、「刑事被告人」である。事件が日本を舞台にしている以上、ゴーンの国籍が何処であれ容疑とされる行為の実行が日本で行われた以上、日本の法に基づいて裁きを受けるのは当然である。そこに無粋な横槍を入れる行為は如何なる大義名分があろうが「主権侵害」行為以外の何物でもない。従ってこの一件、日本とレバノンの「外交問題」へと発展する事は避けられない。
 
※焦点は「日本の司法制度の問題点」ではない。
 
また、ゴーンは「日本の司法制度の問題点」を指摘しているが、それを主張しておきながら日本から逃亡した時点で保釈の是非を判断した時、検察が懸念した「逃亡の恐れ」が正しかった事を自ら証明する形になった。ゴーンが担保した15億円と言われる保釈保証金当然没収、となるが、そのカネも我々一般市民にとっては「とてつもない巨額」でもゴーンにとっては「はした金」でしかなかったのだろう。ゴーン自身が指摘する「日本司法制度の問題点」についてゴーン自身で
 
「日本の検察がそうする意味」
 
示してくれた。近々記者会見を開く、なんて言われているが、そこで何を言おうがそうである以上、幾ら巧言令色を極めて日本の司法制度批判しても「説得力」は生まれない。
 
本当にゴーンが自身の無罪を確信し、「日本の司法制度と全面戦争」するのであればその声は日本国内で上げるべきであって、かつそのタイミングは
 
「自身の無罪が確定した以降」
 
に行うのが最善のタイミングであった。確かにゴーンが言う様な、そしてゴーン自身が体験した様な「検察の問題点」は存在するし、その指摘は全面否定する事は難しいだろう。だが、現状の制度を前提にしてもコレでは外国人被疑者の保釈のハードルを上げただけで、ゴーン以外の在日外国人にとっては迷惑でしかない。そんな先見性でよく大企業のトップが務まったのは不思議でならない。
 
この問題、ゴーン云々ではなく、日本とレバノンの「外交問題」である。ここで諦める様なら日本は世界に舐められる。新年早々外交の正念場となってしまった。安倍首相の手腕が問われる。