レバノンにとっても迷惑なゴーン逃亡

レバノンでも厄介者なのだろう。
 
レバノンに逃亡したカルロス・ゴーン。そのレバノンの法律によれば
 
レバノン政府は自国民を他国に引き渡す事を禁じている」
 
そうで、日本政府が幾らゴーンの身柄引き渡しを要求してもコレを盾にレバノン政府は日本の要求を拒否するであろう事は容易に予想出来る。だが、だからと言ってゴーンにとってレバノンは「安全が確保出来る場所」とはなりそうもなく、既にトルコの航空会社が「ゴーン航空機を違法に利用した」として刑事告訴したと言うし、国際刑事警察機構(ICPO)の手配書がレバノン政府に既に送られ、レバノン政府これを受け取ったと言う。更にレバノン国内でも弁護士グループが
 
イスラエル入国罪」
 
でゴーンを刑事訴追すべきと司法当局に要求したとの事で、仮に訴追され、有罪となれば最長「禁錮15年」もの量刑になる可能性まであると言う。首尾良く日本から脱出出来たまでは良いが、そこから先はゴーンにとっても「想定外」だったのか、ゴーン本人にとっても、またレバノン政府にとってもこの一件で受ける圧力は日毎に増大している模様だ。
 
そんな中、レバノン政府は「ゴーン逃亡劇」への関与否定に躍起になっている。考え様によってはこの「ゴーン逃亡劇」で一番迷惑を被ったのは自国民の行動とは言え、当のレバノン政府なのかも知れない。
 
 
※躍起になって否定する程「怪しい」。
 
ゴーンの「レバノン入国」については
 
「(レバノン政府は)公式な役割を果たしていない」(国防相)
 
「個人の問題」(外務省)
 
と言う声明を出している。疚しい事がないのであればレバノン政府はゴーンが現在レバノンにいる以上、何処かのタイミングでレバノンに入国しているのだから、その入国記録を公表すれば良い。「合法的に」レバノンに入国したのであれば記録が残っている筈だ。逆に「レバノンへの入国自体が不法な手段だった」のであれば入国記録など最初からあるまい。空港経由であれば当然何処から飛んできたどの航空便かも明確に出来る筈だ。それが公表されればゴーンを刑事告訴したトルコの航空会社言い分と整合するかどうかも判る。レバノン政府が「潔白」を主張するのであれば先ずはそこを明確にする事がその第一歩となる。
 
ゴーンの日本脱出は「一人で計画した」と本人は声明を出しているが、一人で簡単にこれだけの脱出劇を出来るとは思えない。様々な協力者が取り沙汰されているが、その真偽が明らかになるのはこれから。現段階ではどれも「憶測」の域を出ないと言えるだろう。
 
そのゴーン8日に記者会見を開く予定だと言うこれに対して
 
「いかなる国も批判せず、わが国(と日本)の2国間関係に影響を与えないのであれば、会見を開いてもよい」(法相)
 
と、コメント。レバノンとしてもこの一件での日本との関係悪化は本意ではない事が窺える。
 
※別にそれは「日本への配慮」とは言わない。
 
これはレバノンからすれば当然で幾ら「自国民」とは言え、ゴーン一人の為に日本との関係悪化となる事など望ましい事ではない。外務省のHPによれば1995年以降、レバノンには首相はおろか、外相の訪問もなければレバノンからの要人も2013年以降ない様だ。それほど親密な関係とまでは言えない模様だが、だからと言って好んで他国との関係を悪化させる余裕などレバノンにはない。そういう意味ではゴーンが逃亡して来たのは「迷惑」と言える部分もあるのだろう。
 
勿論ゴーンを引き渡してしまう選択もあるのだろうが、外圧に屈した印象を与えては只でさえ微妙なバランスの上に政情が成り立っているこの国の場合、更なる混乱が起きても不思議はない。そういう意味ではゴーンの逃亡はレバノンにとっても「迷惑」そのものであろう。さてどうするのか?対応に世界が注目する。