英国はEUを離脱出来るのか?

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次の一手はどうする?

英国のEU離脱が暗礁に乗り上げている。英国政府のEU離脱案は英議会で「3度目の否決」と言う憂き目を見た。事前にメイ首相が

「可決なら自身は退陣」

と、自らの首を賭けたにも関わらず、だ。

それどころか自分達の国民投票で「EU離脱」を決めたのに英国議会は代換案としての

「合意なき離脱」
「離脱の中止」
「再度の国民投票

を全て拒否しているのだと言う。。

これでは英国の選択である「EU離脱」は遠退くばかりで政権側としても打てる手は殆ど尽きてしまっているのが現状の模様だ。他に考えられる手段としては

「離脱案の賛否を争点にした総選挙」

しかない、と言うのも致し方ない事であろう。

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英国のEU離脱が何故ここまで難航しているのか?その最大の理由は

北アイルランド国境問題」

にある。

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北アイルランド問題が英国のEU離脱の最大の難関。

北アイルランド問題」の経緯に付いては割愛させて頂くが、現状では英国もアイルランドEUの加盟国なので「国境はあってないもの」に等しく、その根拠もそれを前提にした不安定なものでしかない。「英国のEU離脱」はその「危うい均衡」を崩す原因に繋がりかねず、英国もEU離脱交渉の前提として

北アイルランド国境に『物理的な国境』を設けない」

事で一致している。それだけ「敏感な問題」なのだが、アイルランドと英領北アイルランドとの間に税関などの「物理的な国境」を設けず、これまで通り「人、モノ、カネの移動を自由」とするなら英国が「EU離脱」する意味が殆どなくなる。英国が離脱してもEUから英国への「人、モノ、カネの流れ」を全て「アイルランド経由」にしてしまえばEUには英国離脱のダメージは殆どなくなる。逆に英国からすればEUを離脱しても北アイルランド経由になるだけで離脱の意味は殆どない。「EU加盟国の権利を喪失しても義務だけが残る」に等しく、そんな条件に対して英国内で反対論が噴出するのは当然の流れである。

EUとしては「北アイルランドだけ特別扱い」とする提案をしたが、それは「グレートブリテン島北アイルランドの関係」が「北京と香港の関係」に等しくなるようなもので、英国人がそれを拒否するのも当然であろうし、それ以前にそれをやってしまうと「英国の分裂」に繋がりかねないだけにそういう事態は英国としては「何としてでも避けたい」のは当然である。

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※離脱案による北アイルランド関連での取り決め要旨。

離脱案では北アイルランド国境問題が移行期間内に解決出来ない場合、

「英国全体がEUとの関税同盟に残る」
「移行期間を延長する」

と言う選択肢があるが、関税同盟だとEUが他国と締結したFTAを無条件に受け入れる必要がある上、EU内部の決定に口出し出来ない。ハッキリ言ってしまえば

「そうなる位ならEUに残留していた方がマシ」

レベルの「英国にとっては何らメリットがない取り決め」になる。かと言って北アイルランド国境で通常の越境手続きを行えば北アイルランド情勢が不透明になる、EUの提案を呑めば「英国自体の分裂」に繋がりかねない、どれを選んでも英国はEU離脱で大きく国益を失う事に変わりはない。英国は自国の国益の為に「EU離脱」を選んだ筈だが、皮肉にも現実には離脱するデメリットばかりがクローズアップされる結果になってしまった。

そもそも英国がEU離脱を選んだ原因は「移民問題」だった筈だ。そこに対する「答え」を出さないまま離脱交渉に臨んだEUにも責任の一端はあるとも言えるが、英国も英国で「EU離脱」が正解ではなかった、と認めるよりないだろう。今一度、問題の原点から考え直して行くのが一見遠回りでも正解なのかも知れない。