同性婚を許容するには法改正が不可欠だ

※違和感が拭えない判決。
 
同性婚が認められないのは憲法違反だとして北海道の同性カップル3組起こした訴訟、札幌地裁は原告の賠償請求を棄却したものの、「同性婚を認めていないのは憲法14条に違反」と初の司法判断を下した。
 

 

 

不肖筆者は同性婚については
 
「制度そのものには反対しないが実現には法改正が不可欠」
 
と言う立場である。判決では同性婚が認められないのは婚姻について定めた憲法24条には違反しないと判示している。
 
憲法24条
 
ここで争点となっているのは「両性」と言う表現。憲法制定当時の状況から
 
同性婚を想定していない」
 
事は明白である。世界でも同性婚が法によって明記、容認されたのは21世紀になってからの話なのだから、その半世紀以上前に作られた法の条文が「同性婚を想定している」と言う解釈をするには無理があるとしか言い様がない。この点においては妥当な判断だと言える。
 
しかし、判決は同時に「同性婚を認めていないのは憲法14条に違反している」と判示している。
 
憲法14条
 
要するに「男女の婚姻」と「同性婚」で対応に差があるのは差別である、と言う事になるのだろうが、それでは同性婚カップルの提出した婚姻届を役所は受理すれば憲法24条違反、不受理なら憲法14条違反、と言う事になる。一体どうしろと言うのか?
 
結論から言ってしまえばこの様な矛盾を解消するには憲法を改正して同性婚を含めた内容に変更する、民法など関連する法律も改正する、と言った政策が不可欠となる。それは言うまでもなく国会がやらなければ何も始まらないのだが、国会に憲法改正を真面目に議論する気があるのかどうかは疑わしい。…職務怠慢以外の何物でもないのだが。
 
法律は一度制定してしまえば条文はそのまま残るが、社会情勢や人権感覚、物の価値観等は時代と共に変化していく。法律もそういう変化に対応していく必要があるのだが、日本の政治家は与野党問わずそういう点に関しては異常に腰が重い。同性婚に対応出来ていない一点を見ても日本国憲法万能の法典でない事は明らかなのだが、それを見て政治家は何も思わないのだろうか?それこそ政治家の矜持が問われる案件なのだが…
 
とは言え、この件はここで判決が確定するとは到底思えず、最高裁判決まで行く事になるのは確実であろう。そうなれば高裁や最高裁で原告の主張が完全に退けられる判決となる可能性もあり、そうなればこの判決は破棄される事になる。国はそうなった場合、裁判では完全勝利となるが、それで良いのか?例えここでこの裁判に最高裁で勝っても別の同性婚カップルが同様の訴訟を起こす事を完全に阻止する結果にはなるまい。目先の裁判に勝てばそれで良し、と言うのは短絡的だと言うよりない。そういう意味では将来破棄されるとしてもこういう判決が出た、と言う事実は消えない。国は同性婚を法的にどう取り扱うべきか考えるべきであると言えるだろう。尤も夫婦別姓をこの件と同一に考えるのは誤りである。「家族」の在り方を根本的に変える事と同性婚を認める事とは意味が違う。夫婦別姓を認める訳にはいかないが、同性婚の在り方を考える時期に来ている事だけは確実である。国会がどう動くのか、それも注目すべき点である。