喫煙者の権利は何処まで保障されるか?

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※改正健康増進法のポスター。

改正健康増進法によって「喫煙者としての居場所を失い、精神的苦痛を受けた」として男性が国に損害賠償を求める訴訟を起こしたと言う。「喫煙者の権利」「喫煙の自由」を求める裁判は珍しいそうだが、男性に勝ち目はあるのだろうか?


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https://news.yahoo.co.jp/articles/190d022257b3aaacfed10a836fd85b2dcd68e70c
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※こういう時の基本的な考え方。

結論から言ってしまうと、この男性の主張が認められる可能性は極めて低い、と言わざるを得ないだろう。何故か?

男性が主張する「喫煙の自由」「喫煙者の権利」と言ったものがあるのか?ないのか?と言う話になれば「ある」と言う答えになる。だが、同時に「タバコを吸わない自由」「非喫煙者の権利」と言うものも存在する。言うまでもなく「相反するもの」だ。どうするか?

こういう場合、「比較衡量」「利益衡量」と言う考え方で判断される事になる。簡単に言うと

「相反する考え方を比較して社会全体によりプラスになる方を選ぶ」

と言う事だ。

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受動喫煙にはこれだけの影響がある。

さて、タバコの場合、吸えば確実に煙を周囲に拡散させる事になる。それを喫煙者と無関係な人が吸い込んでしまう、それが受動喫煙だが、上記画像の様な弊害が指摘されている。喫煙者がその権利を主張して認めさせるには「そのリスクを圧倒的に上回る受動喫煙にとってのメリット」を明確にしたり「改正健康増進法の規制を撤廃して得られる社会全体の利益が現状を上回る」事を立証する必要がある、と言える。裁判に訴えるのは結構だが、「個人の尊厳」を持ち出した時点で「負けフラグ」が立っていると言えるが、その辺の理解はあるのだろうか?

「個人の尊厳」は尊重されなくてはならないが、「改正健康増進法による喫煙可能場所の制限」が全ての喫煙者の「個人の尊厳」を侵害した、とは言えない。同じ喫煙者でも受け止めは様々で例えば「仕方ない」と思う人もいれば「これも時代の流れ」と割り切る人もいるだろう。この男性の主張に共感する喫煙者がどれだけ居るかは知らないが、どれだけ居た所で

「喫煙者の権利を保障するより受動喫煙の被害を防ぐメリットの方が圧倒的に高い」

以上、裁判所は門前払い同然の判決を出すだろう。喫煙者としては残念に思う部分もあるが、それが現実である。今となっては

「タバコの似合う渋いキャラ」

が光っていたのも「旧き佳き時代」のレガシーなのかも知れないが、そういうキャラに出会えても映画やアニメの中だけは「受動喫煙」に関するツッコミだけは止めておこう。野暮なだけだから。

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※こういう渋さもまた魅力の一つ、ではあるのだが。