国民審査にモノ申す

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※制度がポンコツでは仕方ない。

衆議院選挙と必ず、と言って良い程セットになっているのが「最高裁判所裁判官国民審査」。最高裁の裁判官を対象に「不適当」と思う裁判官を国民が罷免出来る制度で、数少ない

「主権者である国民が司法に関わる」

制度である。が、この国民審査、「制度がポンコツで機能していない」とされている。今までこの制度で罷免になった裁判官が皆無である理由だろう。70年以上運用され続けて「罷免された裁判官が0」なのである。本当にこの制度、意味があるのか?記事はその国民審査の結果について、である。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/5fa238701b968ce192e644ee0c1a873142a530db

今回の国民審査は今までの形骸化したものとは一味違っていた。理由はこれ。

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※この規定の憲法判断が注目を集めた。

民法750条の規定が憲法違反か否か?選択的夫婦別姓の是非を巡って争われた裁判での憲法判断、裁判官それぞれの意見も別れたが、「合憲」判断をした裁判官は選択的夫婦別姓賛成派の、逆に「違憲」判断をした裁判官は選択的夫婦別姓反対派の

「国民審査で罷免すべき対象」

としてSNSなどで標的にされる事態となったのである。

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※保守派による罷免対象裁判官リスト。

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※左翼による罷免対象裁判官リスト。

と、そのリストを挙げて、並べて見ると左右双方から罷免の標的にされた裁判官が居た事が判る。これは「選択的夫婦別姓違憲判断をした」以外にも様々な「保守派からは納得いかない判断」をした為である。左右双方から狙われるとは裁判官も楽じゃない。

だが、結果を見るとやはり、と言うべきか、左右双方から「罷免対象の標的」にされた裁判官の罷免率が他の裁判官に比べて高かったが、それでも罷免にするには「到底足りない」結果だった。罷免させるには過半数の「罷免相当」が必要だが、その率は7%強。惜しいとか惜しくないとか言う次元の問題ではない。

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※国民審査での裁判官罷免のハードルは高い。

そもそも不可解なのはその投票形式。

「罷免させたい裁判官の名前の上に✕を付ける」

事によって「のみ」、罷免の意思表示となる。白紙投票は何故か「全員信任」となる。これが制度が機能しない原因だと指摘する声は多い。

「信任する裁判官に○を付け、白紙は不信任」

とした方が国民の意思は明確に伝わると思うがそうはならない。何故か?

最高裁判所裁判官が国民審査の対象になるのは

「任官後初の総選挙時、その後10年ごと」

であるが、裁判官には定年がある為、任官年齢を考慮すると殆どの裁判官が1回しか審査対象にならない。これで十分に制度が機能していると言えるか?口悪く言ってしまえば最高裁の裁判官になって総選挙を1回超えてしまえば実質その後はやりたい放題になる。そんな裁判官は(多分)居ないだろうが、裁判官にその気さえあれば

最高裁判決によってこの国を実質支配」

する事も不可能ではない。

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最高裁がそれを乱発する事も不可能ではない。

国民による裁判官の「監視」は国民審査しかない。判決に関するニュースを見ていると地裁高裁レベルでは不可解な判決が出ている事がままあるが、地裁や高裁の裁判官を監視する制度はない。市民感覚では理解不能な判決や明らかに公正さを欠いた判決を出す裁判官をチェックする制度も必要だ。ある裁判でこんな事があった。

〈原告がその主張を立証する為の弁論をしようとした所、突然謎の閉廷。次の公判で原告が当該裁判官の忌避を申し立てたら即座に却下、そのまま何故か結審して判決。原告は自身の主張もまともに出来ず全面敗訴〉

他にも

〈飲酒運転で死亡事故を起こした被告人に何故か危険運転を適用しない〉

とか

〈センターラインを突然越えてきた車にぶつけられた事故で何故かセンターラインを越えた加害車の過失より被害車の前方不注意の過失割合の方が大きい〉

などと、言った謎判決を出す裁判官は存在する。他にも明白な事実誤認や法令の適用ミスを仕出かし、それを理由にした控訴でその理由が認められて判決を破棄される裁判官、そんなのは序の口で最悪なのは冤罪を産み出す裁判官…など、一国民としてどうにかしてやりたい裁判官は少ないながらも確実に存在する。最高裁だけでなく、地裁高裁のそういう裁判官をチェックする何らかの仕組みは必要であると思うのである。国会でそういう審議、やってくれないものか。