トンガでの海底火山噴火による日本付近での奇妙な現象の原因は空振だった

 

※噴煙の凄まじさが伝わって来る。
 
トンガ近海で起きた海底火山の噴火。遠く離れた日本にも津波の影響をもたらし、それどころかアラスカにまで到達していたと言うのだからその規模には畏れ入るばかりだ。この津波ではトンガから日本の間にあるナウルより日本の方が波高が高かったり、通常では津波が到達する筈がないカリブ海でも同様の現象が報告されたりと不可解な部分、今まで体験した事がない現象がが多く存在し、それが気象庁の判断の遅れに繋がった。日本でも漁船が転覆するなどの被害が出たが、甚大な被害にはならなかったのは「不幸中の幸い」と言うべきか。
 
だが、何故この様な現象になったのかについては既に説明の付く仮説が出ており、どうもそれが正解と言えそうな感じがする。最初の一回は仕方ない部分はあるにしろ、気象庁には今回の経験を次回以降にしっかりと活かして貰いたい。
 

 

 


津波警報・注意報が出るまでの時系列。
 
結論から言ってしまえば今回の事態を招いた犯人は「空振」。噴火の際に発生した衝撃波である。これが海面を押し下げる働きをし、衝撃波が過ぎ去った後、海面が元に戻ろうとする動きによって波が発生、その津波日本海溝付近に到達して加速した際に偶然だが断続的に発生していた衝撃波の速度とほぼ一致した為、波の共鳴が起こり、結果日本付近での波高上昇になった、と言うのだ。衝撃波とは大気中で音速を越えた場合に発生するので先に気圧の変動が起き、地震で発生した津波をベースにした予想より早く「潮位上昇」と言う現象が起きた、と言う訳だ。不肖筆者も先の記事で火山性地震が関連しているのでは?と思っていたが、それは間違いだった様だ。
 
「海底火山の噴火」とか「津波」は(安全確保が大前提だが)目で見て確認する事は出来るが、空振によって発生する衝撃波は要するに空気の動きなのだから真っ先に目で見て確認する事はない。そんな例がなかっただけに完全に「盲点」になっていたのだろう。日本でも火山の噴火で空振が発生し、周辺の住宅の窓ガラスを割る被害を出す事は知られていたが、流石にトンガで起きた海底火山の噴火で発生した空振が日本にまで影響を与えるなんて考えなかったのだろう。自然現象のスケールが大き過ぎたが故の「想定外」だったのだと言える。気象庁を責めるのは酷な部分もある。
 
※衛星からはその衝撃波が見えていた。
 
もっとも衛星からはその様子がハッキリと映されていた。地上からではまず観測は出来ないが次回以降はこの手の大噴火が起きた際には衛星からの映像を共有する事や今回の教訓からしっかり学んでいれば正確な予想も出来るだろう。それだけの技術は日本にはある筈なのだから。
 
※火山噴火の被害レベル。
 
火山噴火のレベルは0~8までの9段階あり、それによると2014年の御嶽山の噴火でさえレベル2、1914年の桜島の大正大噴火では溶岩流によって桜島大隅半島と繋がってしまう程だったがそれでもレベル4。1世紀近く農作物の収穫に影響を与えた富士山の「宝永大噴火」でもレベル5である。1991年のフィリピン・ピナトゥボ山の噴火で漸くレベル6だが、このクラスになると地球全体の気候変動の要因となってしまう。この時は日本でも冷夏となり、かつ米が大凶作となった為、深刻な米不足になった事を御記憶の読者様諸兄も多いだろう。輸入米を混ぜた「ブレンド米」とか明らかな抱き合わせ販売をやっていたアレである。
 
それ以上の火山噴火となると阿蘇山カルデラ噴火がレベル7、起きてしまえば世界最強かつ最凶のカルデラ噴火になる事は間違いない。阿蘇山カルデラは世界最大なのだから。また、世界最大のカルデラ湖であるインドネシアのトバ湖では74000年前に史上最大級の噴火が起きたとされており、その時噴出された火山灰は何とグリーンランドでも発見されている程だと言う。丁度この頃、人類の規模が急減して遺伝子の多様性が失われた事が判っている。74000年前に人類は一度絶滅の危機に瀕してしまい、現在を生きる我々はその時の生き残り、と言う説もある程だ。要するにレベル8の火山噴火は人類を絶滅に追いやる力がある、と言う事だ。そんなものに勝とうと言う発想からして間違っていると言えるだろう。
 
今回のトンガでの噴火はレベル5か6とされている。どちらにしても地球規模の影響を与える事は間違いなく、それは既に実証されていると言っても良いレベルだ。人類は膨大な科学的知見を身に付けたが、それでもまだ未知の自然現象は沢山ある、と言う裏返しのだろう。人類は自然の前では調子に乗ってはならない。この噴火はある意味そういう警告なのだと受け止めなくてはならないのだ。そういう認識を持つ事が必要である。