土星の衛星ミマスの内部に海がある?
※土星の衛星はリングの維持に大きな役割を果たしている。
太陽系で2番目に大きな惑星である土星。大きなリングを持ったその雄大な姿は誰もが写真や映像で目にした事があるだろう。だが、天体望遠鏡で実際にその姿を見るとそのイメージはデス・スターに狙撃された天体の如く木っ端微塵に打ち砕かれる事になる。かつてガリレオ・ガリレイは土星を観測して「土星には耳がある」と記録した。その「耳」とはリングの事だったのだが、ガリレオの望遠鏡の性能ではその様にしか見えなかったのだ。それがリングだと発見したのはホイヘンスである。その話を知って子供の頃、実際に自分の目で天体望遠鏡で土星を見た際、妙に納得してしまったのは一つの思い出ではあるのだが。
そんな土星には多数の衛星がある。その一つ「ミマス」と言う衛星に「海がある」可能性があると言うのだ。海があるなら生命体が存在する可能性も…そんな期待を抱かせてはくれるのだが実際にはどうなのだろうか?
温度の高い部分の形がまるでパックマンの様な結果になった。恐らくハーシェル・クレーターの衝撃によるものだと考えられるが、デス・スターとパックマンの両方の特徴を持つ。そんなユニークな一面を持つ天体。それがミマスである。
ミマス自身は小さな天体ではあるが、土星のリングの維持に大きな役割を果たしており、重力の影響でリングや他の衛星と共鳴して公転周期が整数比となっている。自然の成せる技だが、綺麗な整数比になるとは只事ではない。自然の偉大さをその身で示していると言えるだろう。
ミマスの表面はクレーターで覆われ、大気は存在していない。また、温度は-160~200度近くに達し、とてもじゃないが生命体が存在出来る環境ではない。が、それは表面での話であって内部の話は別、と言うのだ。
ミマスも「秤動」と言う動きが確認されている。これは簡単に言うと自転の際のブレで月もこれがあるので本来見えない筈の裏側の一部が地球から見える。月の場合、これによって地球から見える範囲は月の60%弱となっている。ミマスの場合、秤動が自身の公転運動だけでは説明出来ず、その原因として「内部に海があるから」と言う説が提唱されているのだ。実際に「外からは見えないが内部に海がある」と考えられている天体としては木星の衛星エウロパがあるが、ミマスはこちらと違って潮汐力による影響の痕跡が確認出来ない。エウロパの表面は氷で覆われ、非常に滑らかで、かつ氷が木星による潮汐力の影響もあって間欠泉の様に吹き出しているが、ミマスの表面はクレーターだらけの荒涼とした地形だ。そこで「内部海」に懐疑的な意見もあるのだが、現状では「一つの説」としてその可能性が指摘されていると言う事だ。
表面温度が-160~200度で太陽からも相当離れているのにどうして水が液体で存在出来るのか?と言う疑問を持つ人もいるかも知れないが、ミマスは土星を始め、様々な周囲の天体、物質の重力の影響を受けている。それによる潮汐力から発生する摩擦熱があれば理論上水が液体で存在出来る事になるし、地球でも太陽光の届かない深海でも生物が存在している事から似たような環境があれば理論上生命体は存在し得る事になる。が、あくまでもこれは「仮説の一つ」でしかなく、例の「ハーシェル・クレーター」による質量の偏りが原因、と言う説も提唱されている。今後の観測によって明らかにされていく事になるだろうが。
その「ハーシェル・クレーター」、相当大きな天体が衝突したであろう事は明白だが、そのサイズがもう少し大きかったらクレーターどころかミマス自身が破壊されていたと言われている。それでは「デス・スター」の被害天体である。そうなっていたら我々が目にする土星の姿も全く異なっていたに違いない。そんな偶然や美しいまでの数学的均衡などミマスは「小さくても大きな土星の縁の下の力持ち」だと言える。個人的には懐疑的に思っているが、ミマスにも「見えざる海」が存在してそこに生命体が存在していたらこれ程ロマンのある話はない。気になる話ではある。