【雑談】世にも奇妙な星

 

かに星雲も中心にパルサーがある。
 
「世にも奇妙な星」が発見された。4000光年先の天の川銀河内で約18分ごとに電波が強くなる不可解な天体が発見されたというのだ。その正体は「超長周期マグネター」と言う「理論上の存在」だったのではないか?と言われているが、果たしてその実態は何なのだろうか?
 
 
オーストラリアの研究チームが発見した奇妙な星、それは規則的に電波が強まる星である。そういう星なら宇宙には相当数存在するが、「18分」と言う周期の天体は未だ発見された試しはなかった。その正体として最有力候補とされる「マグネター」は中性子星の形態の一つであると言われている。
 
中性子星とは太陽の8倍から30倍程度の質量の恒星がその一生を終える際に起こす「超新星爆発」の残骸である。大質量が通常ではあり得ない密度で凝縮されている為、原子さえもが押し潰され、100%中性子、と言う姿になってしまっている。その直径は僅か20~30km程だと言うが、それでも質量は太陽の数倍はあると言う。仮に中性子星から1立方センチの試料を持ち出せたとしたらその質量はなんと10億t。重力も凄まじいものがあるので人間が降り立つ事など絶対に不可能。まぁ、接近するだけで放射線でやられるのがオチだが。
 
それだけでも十分異常な天体だが、その中性子星の約1割は「マグネター」と言う形態になると言う。これは中性子星が更に強力な磁場を持ったもので、その磁場の強さは宇宙最強レベルで、数十万km彼方のクレジットカードの磁気情報を消去出来る程、と言われている。どうしてそんな強力な磁気が得られるのか?は謎の部分が大きいが、強烈な自転速度が影響しているのではないかと考えられている。
 
中性子星は1秒間に数百回、と言う猛烈な自転をしながら極方向にエネルギーを放出している。これが「パルサー」と呼ばれる状態だが、その自転速度の速さ故に観測される電波の周期は1秒以下、なんて事もザラで中には「ミリ秒パルサー」と呼ばれる電波の周期が「数ミリ秒」と言うものまで存在する。…それを検知出来る観測技術も凄いのだが。
 
だが今回発表された天体の電波の周期は18分。パルサー・マグネターとしては規格外の長さである。こういう天体は「超長周期マグネター」と呼ばれ、理論上は存在し得るとされていたが、「電波の周期が長い=自転速度が遅い→放出するエネルギーが小さい」と言う事で
 
「存在し得るとしても観測不可能」
 
と言う見方が支配的であった。それが観測出来た、と言うなら天文学上の常識を覆す大発見なのだが、そう簡単に確定出来ない所が厄介な所である。
 
マグネターの想像図。
 
そもそも問題の現象は2018年の初頭の数ヶ月だけ確認され、現在では確認出来ていないと言う。何らかの理由でエネルギーを放出し過ぎて活動が止まった、若しくは継続していても地球から検知出来るレベルではなくなってしまったと考えられている様だが、それ故に現状では今までに収集したデータから判断するよりない。それが問題解決を厄介なものにしているのだ。正体が「マグネター」である、と言うのは「最有力候補」でしかなく、その他の天文現象であるとする意見も出ている。予想される自転の遅さから中性子星ではなく太陽も将来そうなると予測されている白色矮星ではないのか?とか、そもそも我々の知らない未知の現象なのではないか?とか。
 
今回の現象は天の川銀河内の「4000光年」と言う宇宙規模では比較的近い距離での事だっただけに観測が出来た、と言う幸運な面もあったが、4000光年と言われてもピンと来ない人も居るだろう。文字通り光の速さで進んでも4000年かかる距離でkmに換算すると3京8400兆km、億の単位を2つも越えてしまう莫大な距離である。天文学者は宇宙を絶えず観測し、新たな発見を続けているが、それでも宇宙についてどれだけ理解したのか?と言われると判っていない事の方が圧倒的に多い。それだけ宇宙とは我々の常識や理解を越えた存在なのである。だからこそ人間の探究心を擽る存在なのだろう。宇宙は実に興味深い。