「破産者マップ」の教訓


※幾ら何でもやり過ぎ。

「破産者マップ」と称して自己破産した人の情報をGoogleマップを利用して掲載していたサイトがあった。地図のピンをクリックすると直近3年分の破産者の氏名や住所等の個人情報を含む情報が閲覧できた。

勿論即刻大問題となり、現時点でサイトは既に閉鎖されているが、その決め手になったのは

「被害対策弁護団

の結成より

「行政指導」

だったのだと言う。


不肖筆者は未経験だが、破産手続きに入ると申し立て人の氏名や住所も官報に明記される。官報は国が出している物であり、その気さえあれば誰でも閲覧出来る。だが、だからと言って

「公表されている情報を何でも転載してネットで公表して良い」

と言う訳ではない、と言う事が明白になった、と言う訳だ。

※自己破産による効果。

そもそも自己破産手続きに入ると官報に掲載される理由は

「手続き終了までに申立人の権利に一時的な制約がかかる」

からである。当たり前の話だが、「これから破産手続きをする」のに新たに借金をするなど考えられない。また、郵便物等も一時的に破産管財人に届けられる事になる。また、手続き中には一定の職業に就けなかったり、資格が停止される事になる。それらの制限を越えてしまう事態を未然に防ぐ意味合いもあるのだ。

サイト運営者は「官報が公文書」である事を理由に

「そもそもそれらの情報を公開したのは国」
「公表されている情報を再編集するのは『表現の自由』」

と、主張していた模様だ。破産申立人の氏名をイニシャルにする、とか住所表記を「○○県△△市」と言った辺りで止めておく、と言った配慮をしていればそれが何の役に立つのか?と言う疑問はさておき、ここまでの事態にはならなかったかもしれない。

そもそも「それ以前の問題」として

「破産申立人の情報を見た人がその情報を何か役に立てられるのか?」

と言う問題がある。世の中にはそういう情報に常に目を光らせている人がいるのは確かだ。金融業に関わる人々がその筆頭だが、不動産業界もそうだと言う。だがそれはあくまでも「職業柄」の事であって、今日何処の誰が破産手続きを開始したとしても、官報に掲載されるその情報を見る人の圧倒的多数は

「直接の利害関係はない」

のである。その意味を考えなかった事がこのサイト運営者の失敗である。

また、国が破産申立人の氏名や住所を官報に掲載するのは

「公表しない事で起こり得る事態やそれによる被害が公表する事で生じる申立人の不利益を越えているから」

と見る事も可能だろう。だがそれは「裁判所と申立人の話」であって、利害関係のない第三者には本来関係のない話だ。破産手続きに入ると、所有している不動産は当然、動産も20万円を越える様な物は手放す事になる。それらを安値で買い漁って高価で転売して儲ける、なんて事も考えられなくもないが、そういうハイエナ商売は野生のハイエナ以上に美味しい思いは出来ないだろう。

いずれにしてもこの一件は公開された情報であっても扱い方一つで違法行為となる可能性がある事を示唆している。

「過ぎたるは尚及ばざるが如し」

このサイト運営者、民事責任を問われる事になりそうだが、例えばブログを発信している側もそうなっても不思議はない。我々も「戒め」としなくてはならない一件であると言える。