「勝者なき」参議院選挙


※2019年参議院選挙の結果はこうなった。

昨日行われた参議院選挙、与党は安倍首相が目標に掲げた「改選過半数獲得」と言う目標は簡単にクリアしたものの、

改憲勢力3分の2割れ」

と言う結果をも招き、それを理由に「安倍首相の完全勝利とは言えない」と言った論調の主張も見かける。と、なるとその相手だった野党がその分「勝利」したと言えるのか?と言うとそうとも言えない。一言で言ってしまうと

「勝者なき選挙」

だったと言える。


「与党VS野党」と言う構図が最も判りやすい「改選1人区」は今回は32あったが、与党の22勝10敗、と言う結果だった。前回2016年の参議院選挙では野党共闘で11勝を挙げていただけに「殆ど変わらない」若しくは「僅かに後退」したと言うのが今回の「野党共闘」の結果である。幾ら野党同士の結束が強まった、と、強弁した所で結果が出なければ意味はない。「単純に票を結集すれば勝てる」と言う程選挙は甘くない、と言う事だ。

また、自民党の勢いに翳りが出てきたのか?と言うと案外そうでもなく、前回2016年の参議院選挙際と比較して見ると


※2016年参議院選挙の結果。

2016年では自民党は56議席獲得。今回は57議席獲得と殆ど変わりない。安倍首相が継続して安定した支持を得ている、と言う証左であろう。同様に野党を見ると

民進32→立憲+国民23」
「共産6→7」
「社民1→1」
「生活1→れいわ2」

と、殆ど変動はない。この3年間で安保法制やもりかけ、各省庁の不祥事、最近の年金問題含め、あれだけ激しくマスコミもグルで政権攻撃していたにも関わらず「議席増」と言う結果にまるで結び付いていない。野党はその間、政権獲得の為に何をしていたと言うのだろうか?しかも今回自民党

「消費税増税

を明言していた。野党は逆に「増税中止」「消費税廃止」などを主張していた。通常国民にとって「増税」程迷惑な政策はない。それを明言していた与党に勝てない野党とは一体何だと言うのだろうか?

※まさに「国賊野党」の事だ。

今回自民党は確かに改選議席を減らした。だが今回の改選は2013年参議院選挙の時に当選した議員達。あの時は「悪夢の民主党政権」からの「解放フィーバー」とも言えるある種異様な状況下での選挙だったので今にして思えば「自民党が勝ち過ぎた」とも言える。思い出して欲しいのだが、この時の選挙で漸く「ねじれ国会」が解消された。第一次安倍政権で発生した「ねじれ国会」、そしてその後の国会での混乱ぶりに有権者の嫌気も最高潮に達していた。そういう状態を解消すべく「敢えて与党に投票」したと言う無党派層も相当数いた筈だ。そして今回は各々が思う所に投票した、と考えるなら「自民党は一桁減」で済んだだけ「反動は最小限」で乗り切った、と評価しても間違いではあるまい。

※何だかんだ言ってもやはり「選挙には強い」。

今回の選挙結果で

改憲勢力が3分の2割れ」

と言う事実を以て「一応は野党の勝利」と言う意見もあるかも知れない。だが、憲法改正の「本丸」は言うまでもなく「9条改正」であろう。これに関しては与党であり、こういう時に限って「改憲勢力」扱いされる公明党は乗り気ではない。それどころか寧ろ難色を示していると言っても良い程で、その観点から言えば「9条改正」の為の「3分の2確保」と言う命題など「最初から存在しない」とも言える。

勿論9条以外にも改憲の議題とするテーマは存在する訳で、それらのテーマ関しては共産党以外は「議論の余地はある」と言える。ただ、憲法審査会が機能不全に陥って議論が行われないのは与野党の主導権争いが原因で、「3分の2」の有無など選挙前から問題にはなっていなかった。安倍首相が指摘した様に

「議論をするのか?それとも適当な口実を付けて議論自体から逃げるのか?」

が問題なのであり、キチンと話し合うのかどうかが問われるべき問題だ。そもそも憲法改正の是非は最終的には国民投票で決まる。それこそ「国民の権利」なのだが、その権利を少数派の我儘で「行使出来ない」状況が生まれてしまっている事こそ「民主主義の原則に反する」行為である。野党にはその意味を噛み締めて貰いたいものだ。

議席増とは言え調子に乗ってはならない。

今回の選挙、全政党で最も議席を増やしたのは立憲民主党だ。8議席増で非改選と合わせて32議席となり、議席を減らした国民民主党と「明暗を分けた」とも言える。しかし幾ら現在「党名や政策、理念が違う」と言っても「まとめれば民主党」である事に変わりはなく、トータルで見れば6議席増過ぎない。前回の選挙では「民進党」の看板で32議席獲得していたが、今回は「立憲+国民」で23議席に過ぎない。また、今回改選対象の2013年参議院選挙当選組は旧民主党にとって政権陥落後の一番苦しい時期の選挙だった。そこからの上積み、と言う意味で見ると「民主党系」の政党が党名や理念、政策を一新した所で有権者の信頼を回復した、なんて「とてもじゃないが言えない」のが現状だと言える。と、言うか立憲民主党は「議席増」だなんて浮かれていられる状況ではない。有権者の「民主党アレルギー」は立憲民主党や国民民主党が思っている以上に根強く、彼等がこの6年でしてきた事はその払拭には役立っていない、と言う事を認識しなくてはならないだろう。また、立憲民主党は今回も著名人候補を数多く擁立したが、その殆どが落選の憂き目を見た。看板そのものにも問題があるのは間違いないが、それと同時に

「表集め、話題作りに著名人を活用」

と言う選挙戦術は現在の有権者には通用しないものだと考えるべきだろう。それだけ有権者の「候補者を見る目」が厳しいものになっている現実を直視しないと立憲民主党いずれ衰退する運命になる。

※貧乏くじばかり。

共産党も1とは言え結果的には議席減だった。「野党共闘」を打ち出しても選挙の度に「貧乏くじ」引いているのが共産党だ。それで安倍政権に深刻なダメージを与えるだけの選挙結果が出せればその自己犠牲の献身も報われるかも知れないが、安倍政権にそこまでのダメージ与えた、なんてお世辞でも言えないし、共闘しても得をするのは立憲民主で、国民民主は自滅街道、社民は有象無象、1人区で統一候補を立てても前回以下の敗北…発想が既に「通用しない」か「根底から間違っている」かのどちらかだろうが、共産党その愚に何時になったら気付くのやら?抜本的に方針を改善しないと「お先真っ暗」なのは確実であろう。

※少なくとも国賊野党にそれはない。

結局「勝者なき選挙結果」であるなら「現状維持」が民意なのだと理解するよりない。野党が「現状を変えたい」と思うなら「キチンとした対案を出す」とか「憲法改正議論についても議論に応じる」などして正攻法で実績を作らないと国民の支持は増えない。与党の失敗を待つだけで批判する手法はもう通じない。そういう事を受け止めて実行出来る政治家こそが国民に求められているのである。