初めて観測された超新星爆発のプロセス

 

1054年に発見された超新星爆発の結果であるかに星雲
 
太陽より遥かに質量の大きな恒星がその一生を終える際「超新星爆発」と呼ばれる大爆発を起こして華々しく散っていく。それはあたかも新しい星が誕生したかの様に見える事から「新星」の名が付くが、実際にはその逆で星の最期の姿である。恒星の一生は人間とは比べ物にならない程雄大なスケールなのでリアルタイムでその様子を観測するのは非常に困難なのだが、この度その様子の観測に成功したと言う。非常に貴重な観測データが得られる事になる。
 

 

 

太陽の様な恒星では水素がヘリウムになる核融合がそのエネルギーとなる。が、当然質量は有限なのでいつかはその水素が尽きてしまう時が来る。太陽の場合、「その時」は約50億年後、と言われている。
 
水素が尽きた星ではヘリウムが核融合を起こし、炭素や酸素等の様々な物質が生成される。しかし恒星はその巨大な重力と核融合で発生するエネルギーが釣り合っているからその姿を維持出来るのであって、この状態になるとそのバランスが崩れてしまう。「赤色巨星」と呼ばれる状態である。太陽も将来そうなってしまい、その際水星と金星は太陽に飲み込まれてしまうと考えられている。地球はどうか?と言うと飲み込まれてしまうかどうかギリギリのライン。飲み込まれてしまえばそこまでだが、運良く助かったとしても大きく軌道が変わるなどの多大な影響が出る。いずれにしても生命が存在出来る環境にはならなくなってしまう事だけは確実だと言われている。
 
赤色巨星では様々な物質が生成されるが最終的に鉄が生成される。しかし鉄はどうやっても核融合出来ない。こうなると恒星は自身の重力で潰れて行き、それに反発するエネルギーが一気に大爆発を起こすこれが超新星爆発だ。その凄まじさは人間の想像を遥かに越え、1054年超新星爆発は世界各地でその記録が残されている。昼間でも肉眼で見えるレベルだったと言うから何を言わんや、である。その痕跡は現在「かに星雲」として観測されている。
 
さて今回の発見。地球から1億2000万光年離れた銀河にある太陽の10倍程の恒星がその発見なのだが、従来超新星爆発は直前まで平穏な状態を保っていながら「その時」を迎えるものだと考えられていたのだが、この観測で直前に急激な自己崩壊を起こしている事が明らかになったと言うのだ。宇宙最大級の爆発なだけにその前兆も凄まじいものだった、と言う事か。
 
※1987年の超新星爆発の結果の様子。
 
この現象は光が地球に届くまでの時差があるので実際には1億2000万年前、つまり恐竜が地球にいた頃に起きたものだが、それだけの時間と距離があるにも関わらず見えてしまうと言う点から超新星爆発の凄まじさが伝わって来るのではないか?超新星爆発は衝撃波や放射線等も大量に発生させるので地球からそう離れた場所で起きると地球にも相当の影響が出るが、これによって本来宇宙には存在しなかった炭素や酸素、鉄と言った物質が生成され、宇宙にバラ撒かれる事になる。そういう意味では我々の地球にあるそれらの物質も遠い過去に起きた超新星爆発の残骸から生まれたものだと考える事も出来るのである。そういう意味ではロマンのある話ではあるまいか?いずれにしても今まで謎だった「恒星の最期の瞬間」のプロセスが観測され、新たな知見が加わったと言える。実に興味深い発見である。更に観測を続けていく事で新たな発見もあるだろう。今後の成果に大きな期待が寄せられる。