祝!大隅良典栄誉教授ノーベル医学・生理学賞受賞

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大隅教授、ノーベル賞受賞おめでとうございます。

今年のノーベル医学・生理学賞は、飢餓状態に陥った細胞が自らのタンパク質を食べて栄養源にする自食作用「オートファジー」の仕組みを解明した東京工業大大隅良典栄誉教授に授与されると決定した。

誠に喜ばしい事であり、心から大隈教授への敬意を表すると共に今後の一層のご活躍を祈念するものである。
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http://www.sankei.com/smp/life/news/161003/lif1610030031-s1.html?pdm_ref=rna
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※オートファジーのプロセス

「オートファジー」とはギリシャ語の「オート」(自分)と「ファジー」(食べる)を組み合わせた造語で、栄養がなくなった細胞内に、二重膜でタンパク質などを取り囲むオートファゴソームという小胞ができ、分解酵素が入った細胞小器官と融合してタンパク質をアミノ酸に分解し、栄養源として再利用する仕組みを言う。言わば「細胞のリサイクル」である。

この現象が存在する事自体は1950年代から知られていたが、分子レベルでのメカニズムや生理学的な意義は謎のままだった。

大隅教授は昭和63年、酵母でタンパク質などが分解されていく様子を光学顕微鏡で観察することに世界で初めて成功。更に平成5年にはオートファジーに不可欠な14種類の遺伝子を特定するなどこの道での第一人者と言うべき存在である。

その後大隈教授は研究対象を動物細胞に拡大し、オートファジーの仕組みは人間など細胞内に核を持つ生物が共通して持っていることを発見。細胞内に侵入した細菌や不要物の除去など、様々な重要な役割を担っている事を明らかにした。

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※オートファジーの研究は多くの病気の治療に役立つ。

特に神経疾患の分野では神経細胞内にたまった異常なタンパク質は通常、オートファジーで分解され、それらの蓄積を防いでいる事が判明している。平成25年には、脳内に鉄分が蓄積して障害を起こす神経変性疾患「SENDA」の原因は、オートファジーの遺伝子異常だと判明、また東京医科歯科大のチームは昨年に、過度の食事制限で脳細胞が栄養不足になると、アルツハイマー病が悪化することを突き止めた。栄養不足になると、細胞内に異常なタンパク質が過剰に増加、オートファジーでも分解しきれずそれらが蓄積され脳細胞が死んでしまうのだ。

その他にも2型糖尿病の発症抑制にオートファジーが必要だと言う研究結果や、高血圧の一因である血管収縮にもオートファジーが関わっていたり、オートファジーの抑制で脂肪肝の悪化に繋がったりと、オートファジーの機能低下が様々な疾患の原因になっている様なのだ。

その反面、オートファジーはがん細胞の増殖を助けてしまうことが以前から指摘されていたりもする。抗がん剤を投与すると、がん細胞は急激な栄養不足に襲われるが、そうなるとがん細胞内部でオートファジーが起こり、不要なタンパク質などを食べてがん細胞は生き延びてしまうのだ。

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※オートファジーの決定的瞬間。

こうなるとまるで「諸刃の剣」だが、元々細胞内にはオートファジーを促進する物質と抑制する物質があり、これらのバランスが崩れると、がんなどの発症に繋がると言うのだ。これは大隅教授に師事した大阪大の吉森保特別教授らが平成25年に発見した。

この様にオートファジーを研究し、それをコントロール出来るようになればかなりの数の疾患の治療に有益となる可能性は極めて高いのである。まさしく「人類共通の財産」となる研究であり、ノーベル賞に相応しい研究であると言える。大隅教授ノーベル賞受賞を改めて祝福したい。
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※安倍首相からも祝福の電話が…